11. 11月 2011 · (54) 高橋隆元先生 特別インタビュー はコメントを受け付けていません。 · Categories: 聖フィル♥コラム · Tags:

聖フィル♥コラム一周年記念は、常任指揮者である高橋先生のインタビューと密かに決めていました。先生には既に3年近く(正確には来年1月で3年)、毎月2回ずつご指導いただいています。練習後に、校内の薄暗いベンチでお話を伺いました。

――子どものころの音楽体験を教えてください。プロフィールによると、15歳ころから独学でピアノなどを学んだそうですね。

高橋隆元先生 (以下敬称略  5歳のとき、弟がゴミ捨て場から拾って来た (!!) チャイコフスキー作曲《くるみ割り人形》のドーナツ盤レコードを、父が小さなプレーヤーでかけてくれたのがクラシック音楽との最初の出会いです。 中3の時、ピアノの上手な同級生に教わりながら、音楽の授業で聴いたシューベルトの《魔王》の伴奏を、彼が右手、僕は左手パートを担当して連弾で遊んでいたのですが、ある日、彼が一人で全部弾けるようになって聴かせてくれた。それが妙に悔しかったんですね。それで僕も音楽室のピアノで練習して全部弾けるようになりました。その勢いでピアノを買ってくれるように親に頼んだら、「公立高校に入学できたら浮いた学費で買ってやる」と言われたので、がんばって合格。それからピアノ漬けの日々が始まりました。

――他に楽器の演奏は?

高橋 中2で卓球部から吹奏楽部に転部し、初めにユーフォニアム、その後トロンボーンを担当。でも音が筒抜けのマンションに住んでいたので、金管楽器では音が大きすぎて、家で思うように練習できない。それで、中2から中3にかけて新聞配達をしてオーボエを買い、部活でトロンボーン、音楽室でピアノ、家でオーボエを練習していました。高校の吹奏楽部ではオーボエを担当、3年のときは指揮もして、それが僕の指揮活動の出発点です。

――次に聖フィルについて伺います。聖フィルはこの2年間半にどのように変わったでしょうか。

高橋 「5」という数字を特に意識していたわけではなかったのですが、第5回定期演奏会は、結果的に節目の演奏会になりました。まだまだ改良すべき点は沢山ありますが、音色を作っていこうとする意識、ファースト・ヴァイオリンやチェロのパートを筆頭に各パートが1つのチームとしてまとまる意識、管楽器の音程に対する意識などが格段に高まり、トレーナーの先生方のご尽力や、パート・リーダーの方々の今までの努力が花開いた演奏会だったと思います。また、有森先生、川畠先生、藤森先生が、共演において私たちに与えてくださった影響は計り知れず、ただただ感謝しかありません。特に、藤森先生が練習のときに《未完成》を一緒に弾いてくださったことは集中力や意識を高める上で大きかったですね。

――聖フィルが今後目指すべき姿を、どうお考えですか?

高橋 オーケストラって、弦楽四重奏の延長線上にあると思います。もちろんオーケストラは人数が多いし管楽器や打楽器も入りますが、基本は同じ。アンサンブルです。今後、聖フィルに目指していって欲しいことは、各パートのトップを中心に、指揮者が出している信号に対して、こんな信号が出ているからこっちへ行ってみようかとか、行ってみたけれど変な場所に出そうだから、ちょっと戻そうかみたいな、無言の会話ができるようになることです。指揮者が奏者に対して一方向の信号を出すのではなく、各奏者がいろいろな方向にアンテナを張り巡らして、お互いに聴き合いながら演奏するそれができるようになって更に、聴いてくださる方の反応も含めて、作曲家・聴衆・演奏者・ホール・指揮者の融合が起きたら、もう最高です! 練習で積み上げたものをそのまま提示するのではなく、練習と本番が良い意味で違っちゃってかまわないと思うんです。

ただ、技量が伴わないと、演奏が崩壊してしまいます。そうならないためには技量はもちろんですが、音楽における緊張と弛緩の感覚、フレーズが始まろうとしているのか終わろうとしているのかの感覚などが、わかってくることが必要です。 だから、僕としては目指すべきヴィジョンの中に、『古典派の音楽をちゃんとできること』というのを常に入れておきたいと考えています。ちゃんとっていうのは、間違えずに正しくメトロノーム通りできることみたいな小さい意味じゃなくて…古典の曲ほど楽譜に書かれていないアゴーギク(急緩法_書かれているアゴーギクとはアッチェレランド――だんだん速くやリタルダンド――だんだん遅くなど)が存在するのですが、それを用いるべきときに自由自在にできるということです。

――古典派よりもロマン派の曲を好きな人が多いようですが。

高橋 そのためにも、是非古典です。ロマン派から近現代にいたる作曲家たちも、ハイドンやモーツァルト、ベートーヴェンを勉強したのです。古典派の音楽を(アゴーギクを身につけてテンポを)うまく動かせるようになると、ロマン派の曲も上手に動かせるようになってきます。

――練習中、指揮者に頼り過ぎないでとおっしゃいますね。

高橋 オーケストラ側の音楽の理解やアプローチが未熟すぎる場合は、指揮者が全体を制御したりお世話する必要があるかもしれませんが、オケの団員と指揮者が、それぞれの責任と使命で演奏に向き合うという考え方、つまり、教える側と教わる側ということだけではなくパートナーであることが理想ですね。 「これはこうなんじゃないか?」って吹いたり弾いたりしてこちらにぶつけてくれると、違っていた場合も言いやすいですし、逆に「あ、それ名案ですね!」ってこちらが教わることもあります。わかりやすく言うと、演劇や映画には監督さん(指揮者)がいらっしゃいますが、実際演じるのは役者さんや声優さん(奏者)だということです。オケの場合は指揮者が目立ちすぎるんですよね(笑)。

――指揮の準備は、何をどのようにするのですか?

高橋 準備のための期間にもよりますが、通常はまずスコアをピアノで弾いてみたりしながら感覚的な部分から始めます。その後、ペリオーデ(フレーズのグループ構造)を考えます。意味がよくわからない部分があると、和声や、先でどのように展開されているかを分析します。譜面を読んでも音が浮かばないような初めての曲を、来週指導しろとでも言われない限り、CDなどは聴きません。その演奏の印象が残って、アプローチが偏ってしまうのを避けるためです。

――今までで指揮をするのが一番難しかった曲は?

高橋 《運命》!!(即答!)全楽章に難しい箇所がある上、ひるんだらおしまい。オケも指揮者も、気が抜ける瞬間が全くない!! 《運命》とそれから《英雄》は、近いうちに聖フィルで再演できないかと考えています。

――最後に、聖フィルに一言、お願いします。

高橋 2年半、皆さんと音楽作りをしてきましたが、選曲にしてもオケの運営にしても、いろいろなお考えがあることを再認識させられています。でも、それぞれの考え方の違いを認めて、それを楽しめるようになっていけば、無理に1つの方向へ行ってしまうよりも、逆に面白いものができそうな気もします。まずはこのままやっていきましょう。そして、まだ聖フィルには早すぎる!という懸念を吹き飛ばした第3回定期のブラ1の例のように、皆さんから起きてきた「波」を互いに敏感に察知し、大切にしながら、良い方向へ向かっていくことができれば嬉しいですね。

予定時間をオーバーしてお話してくださった高橋先生。お疲れのところ、どうもありがとうございました。楽譜どおりに弾くだけではなく、自分でイメージを作り、それを表現するように務めるべきだというご指摘は、私たちが目指すべき良い目標だと思います。今後とも厳しく暖かくご指導くださいますよう、よろしくお願いいたします。