04. 1月 2011 · (9) 新年の音楽 はコメントを受け付けていません。 · Categories: 聖フィル♥コラム · Tags: ,

明けましておめでとうございます。今年も、聖フィルと聖フィル♥コラムをよろしくお願いいたします。

クリスマスの音楽はたくさんありますが、新年にちなむ音楽って思いつきません。バッハの1月1日用の教会カンタータ(《クリスマス・オラトリオ》の第4曲もそうです)は、新しい年を迎えるためではなく、キリスト降臨1週間後の、割礼と命名の日のための音楽です1。日本では「お正月=1年で最も重要な特別な行事」ですが、欧米の1月1日はごく普通の祝日です。

日本の新年の音楽といえば、お箏の音色かもしれません。つい1週間前まで大音響でクリスマス・ソングを流していたデパートや商店街も、新年はお箏の音楽に一変します。ホテルで年越しをしたとき、1月1日の館内音楽がお箏に変わっていて、驚きました。

確かに、お箏の音色を聞くと改まった気持ちになり、新年を迎えたことを実感しますね。考えてみると、お箏こそが日本の伝統楽器であり、日本人の音楽だったはずですが、わたしたちは、箏や三味線、能や文楽、歌舞伎などの日本の伝統音楽を、ほとんど耳にする機会も無く、よくわからないまま暮らしています。一方、テレビから流れる音楽や、楽器で演奏したりCDを聴いたりして親しんでいる音楽は、ほとんどすべてが明治時代に欧米から輸入されたものなのです。なんだか変です。

大学時代に1年間、副科として生田流箏曲を履修したことがあります。初心者4人のグループ・レッスンで、学年末試験には《六段の調》の初段を弾きました。弦を漢字で記した楽譜(しかも、生田流は縦書き)にびっくり! でも先生は「てんとんしゃん」とか「こーろりん」などと口ずさみながら教えておられ、口伝の世界なのだと実感したものです。ちなみに、尺八(やフルート、ヴァイオリン)とともに演奏される宮城道雄の《春の海》は、日本的情緒満載でお正月音楽の定番ですが、実は西洋音楽の影響を受けた作品です。

イエス・キリストの誕生を祝う(はずの)クリスマスが過ぎると、大晦日はお寺の除夜の鐘、新年になると神社に初詣と、日本人の柔軟な(?!)宗教観が凝縮されたような年末年始。現代日本の生活テンポからかけ離れてしまったお箏の音楽を聞きながら、普段忘れがちな日本の伝統文化や日本人としての側面を思い起こすことができるのも、お正月の数日間だからこそかもしれませんね。

  1. 追記:バッハの世俗カンタータの中に、新年祝賀用の作品がありました! (10) 自由音楽家としてのモーツァルト参照のこと。