03. 7月 2013 · (140) 本当は「ブラボー!」じゃない! はコメントを受け付けていません。 · Categories: 聖フィル♥コラム · Tags:

プロ・オケのコンサートで演奏終了後、ブラボーの声がかかることが多くなったように感じます。一時、ほとんどいなくなったブラボーおじさんが、あちこちで復活しているようです。アマ・オケでメイン曲を演奏しないメンバーが、さくらになって叫ぶ「ブラボー隊」(なんて、今は無いのかな?)とは違い、出来が良いときにしか声をかけません。演奏が素晴らしかった、楽しめたということを、相手に伝わるように表現することは、悪くないと思います(突然、隣で叫ばれると、ぎょっとしますけれど)。ただ、気になることがあります。

ブラボーの元はイタリア語の「良い」である bravo ですが、かなり日本語化されてしまいました。違いは2つ。まず、最後の子音は b ではなく v ですから、本当はブラヴォ。もう1つ、発音よりも気になるのがアクセント。イタリア語は、fermata フェルマータとか pizzicato ピッツィカートのように最後から2つ目の音節にアクセントがある単語が圧倒的で、bravo も同様。本当は、最後のボ(ヴォ)ではなくラにアクセントを置くブラーヴォです(稀にこのアクセントで叫んでいる人もいますね)。

ブラボーでもブラヴォーでもブラーヴォでも、それほど大きな問題では無いかもしれません。ただ、女性ソリストにブラボーと声がかかると、ハラハラします。だって、ブラーヴォは男性に使われる「良い」ですから。

イタリア語の形容詞は、形容する名詞の性や数に従って語形変化します。bravo のように最後が o で終わるのは、男性単数名詞にかかる時。女性単数なら o ではなく a。男性複数なら i で、女性複数は e。「あなた(がた)は上手い」と言うときも、形容詞を主語に合わせて変化させます。ですから、正確には:

  • 男性ソリストに対して                     Bravo! ブラーヴォ!
  • 女性ソリストに対して                     Brava! ブラーヴァ!
  • 複数の男性奏者に対して(たとえば男性4人の弦楽四重奏団)  Bravi! ブラーヴィ!
  • 複数の女性奏者に対して(たとえば女性4人の弦楽四重奏団)  Brave! ブラーヴェ!

それでは、男女混合の複数の場合は? たとえば、木管の第1奏者4人が演奏後に起立して拍手を受けているとき。声をかけたいが、クラリネット奏者だけ女性で残り3人が男性だったら? 正解は、男性複数形と同じブラーヴィ。逆に男性1人で女性3人だったら女性複数形のブラーヴェになるかと言うと……。

この場合でも、男性複数形のブラーヴィが正解。人数が多い方の性になるわけではありません。イタリア語では、男性が1人でも含まれている複数は男性複数形になるのです(どちらが多いかわからないと語形変化できないのでは困りますしね。男性と女性が同数のときも困るし)。というわけで、

  • 複数の男性奏者、あるいは男女混合の奏者に対して       Bravi! ブラーヴィ!

もし、とてもとてもとても上手だった場合は? いつも使っている音楽用語を応用できますよ。ピアノ→ピアニッシモ、フォルテ→フォルティッシモのように:

  • ものすごく上手な男性ソリストに対して            Bravissimo! ブラヴィッシモ!
  • ものすごく上手な女性ソリストに対して            Bravissima! ブラヴィッシマ!
  • ものすごく上手な複数の女性奏者に対して           Bravissime! ブラヴィッシメ!
  • ものすごく上手な複数の男性あるいは男女混合の奏者に対して  Bravissimi! ブラヴィッシミ!

外国人はブラヴィッシマ、ブラーヴィなどとうまく使い分けている bravo(よく観察していると気づきます)ですが、日本人が v を発音したり、語形変化をつけて叫ぶなんて、キザ過ぎ? たしかに、ここは日本ですから日本式のブラボーで良いのかもしれませんね。 でも、せめて外国人の女性ソリストには、ブラーバ!と声がかかるようになればいいのになと思う今日この頃です(追記:このコラムは一部書き改めて「オケ奏者なら知っておきたいクラシックの常識」に収めました。こちらもお読みいただければ嬉しく思います)。