30. 4月 2012 · (79) ドレミは階級社会? はコメントを受け付けていません。 · Categories: 聖フィル♥コラム · Tags: , ,

アマ・オケ奏者のための楽典②は、前回(ドレミの元)ご紹介したドレミファソラシについて。この7音は平等ではありません。会社組織で考えると:

ド(主音、トニックあるいはトニカとも):社長
ソ(属音、ドミナント、主音の5度上):部長
ファ(下属音、サブドミナント、主音の5度下):次長(課長ではなく)

他の音はヒラ(!?)ですが、主音を導く導音シは、社長秘書? さて、この7音の上にそれぞれ3度と5度の音を重ねた和音を、三和音と呼びます。譜例1はハ長調の三和音。順番をローマ数字で表します。重要なのは:

I(主和音、トニカ和音、T):調の中心。安定している
V(属和音、ドミナント和音、D):不安定。主和音に進もうとする強い性格をもつ
IV(下属和音、サブドミナント和音、S):特に強い性格はないが、色彩の変化などをもたらす

譜例1:ハ長調の三和音(クリックで拡大します)

図1:TDSの関係

トニカ和音T、ドミナント和音D、サブドミナント和音Sの中で、TとSはどちらにも進むことができますが、DはSには進めません。必ずTに進みます(図1参照)。実に単純なこの決まりが、バロック時代から19世紀末までのクラシック音楽を支えて来た、長短調の基本です。この規則に従わなかったのが、ヴァーグナー。楽劇《トリスタンとイゾルデ》(1865年初演)の第1幕への前奏曲で、トニカに進まないドミナント(や、調性感があいまいないわゆる「トリスタン和音」と呼ばれる新しい響き)を使い、後の調性崩壊につながりました。

Dの和音ソシレの中のシは、導音。半音上行して、Tの中の主音ドに進みます。この D→T(V→I)進行によってドミナントの持つ緊張が解消されることを、「解決」と言います。高橋先生がときどき練習中に「解決する音」と言われるのは、これ。VからIへ進み、不安定なドミナントがトニカに安定したということです。音楽はこの緊張と弛緩、不安定な部分と安定した部分を繰り返しながら進んで行きます。