26. 4月 2012 · (78) ドレミの元 はコメントを受け付けていません。 · Categories: 聖フィル♥コラム · Tags: , , , ,

「アマ・オケ奏者のための音楽史」第5回はドレミについて。いつも何気なく使っていますが、どうしてディン ドン デン ドゥン ダンとか、クン シャン チャオ チュ ユとかではなく、ド レ ミ ファ ソ ラ シなのか、これが何に由来するのかご存知ですか? 話は中世まで遡ります。

11世紀の僧グイード・ダレッツィオ(991-2頃〜1033後)が起源((64)『のだめカンタービレ』ありがとう!の図1で、千秋がこの名前もあげていますよ)。グイードは、音の高さとシラブルを対応させて歌う「ソルミゼーション」を考案しました。洗礼者ヨハネの誕生の祝日(6月24日)に用いられる、賛歌という種類のグレゴリオ聖歌《Ut queant laxis(貴方の僕たちが)》は、6つの句の初めの音が1つずつ高くなっていきます(譜例1の◯で囲まれた音参照)。そこで、グイードは各句の最初のシラブルをそれぞれの音の名前にしたのです。この ut re mi fa sol la ウト–レ–ミ–ファ–ソル–ラの6つが、ドレミの元の形です。

譜例1:《Et queant laxit(貴方の僕たちが)》(クリックで拡大します)

グレゴリオ聖歌はたくさんあり((65) グレゴリオ聖歌はいくつあるのか参照)、1年に1日しか歌わない聖歌も(たとえば、上の洗礼者ヨハネの誕生の祝日に使う聖歌は、同じ洗礼者ヨハネ殉教日や、福音書家ヨハネの祝日には使えません)。しかも、ほぼ口伝の時代ですから、大変! でも、この6つのシラブルとそれぞれの音の関係を覚えておくと:

図1:グイードの手(15世紀終わりの写本より)

  • 知らない旋律を聞いたとき、ウト–レ–ミで書き取ることができる
  • 読めない記号で書き付けられた知らない旋律を、ウト–レ–ミに対応させて覚えることができる

6つの音のうち、ミとファだけが半音の関係。下から全音–全音–半音–全音–全音です。ドから始まる6音だけではありません。シドの半音をミファと考えると、ソから始まる6音もウト–レ–ミ–ファ–ソル–ラ。シ♭を使うときは、ラとシ♭の半音がミファで、ファから始まる6音もウト–レ–ミ–ファ–ソル–ラ。6音を越える音域を持つ旋律は、この3種類を置換え(ムタツィオ)しながら歌いました。音によっては3種類に置換えられるものもあり(たとえばドの音は、ウト、ファ、ソル)、手の関節を使った早見表が使われました。グイードの手と呼ばれます(実際には、グイードの死後100年ほどしてから考案されたようです)。

ややこしい置換えなしに使えるように、17世紀初めに7つ目のシが加えられました(賛歌の最後の「聖ヨハネ Sancte Ioannes」の頭文字からと言われています。ラテン語に J はありませんでした)。歌いにくいウトをドに変えて、ドレミファソラシが完成。私たちも中世の僧たちと同じように、新しい旋律を歌ったり、覚えたりするときにお世話になっています。

ut re mi fa sol la は、5種類すべての母音と、それぞれ異なる6種類の子音の組み合わせ。このバラエティーに富んだ6つのシラブルから始まる《貴方の僕たちが》の各句の最初の音が、ちょうど1音ずつ高くなっていたなんて、素晴らしい偶然だなと思ったあなたは鋭い! 実はこの賛歌、歌詞は9世紀まで遡ることができるのですが、旋律はグイードより古い時代の記録が無いのです。そのため、グイードがソルミゼーションのために自分で作曲したか、あるいは現在は失われた既存の旋律を、作り直したのだろうと考えられています。