27. 7月 2011 · (39) アウフタクトの3つの意味 はコメントを受け付けていません。 · Categories: 聖フィル♥コラム · Tags: , ,

専門用語を説明無しに使うのは良くないと思いつつ、既にコラムで何度もアウフタクトという言葉を使いました。他の言葉で短く言い換えられなかったからです。今回、このアウフタクトについて考えてみたのですが、3つの意味で使われ得ることに気づきました。

まず第1は、言葉通りの意味。ドイツ語のアウフタクト Auftakt を直訳すると「上拍」。英語のアップビート upbeat です。2拍子や3拍子などの拍節を持つ音楽において、1拍目は下に向けて打ち降ろす強拍、つまり下拍です(指揮者の手の動きを思い浮かべてください)。それに対して上拍=アウフタクトは、1拍目以外の拍を指すのです。ただ、日本では普通これを、アウフタクトではなく「弱拍」と呼びますね。

第2の意味は「弱起」のこと。旋律が第1拍以外から始まる音楽を「弱起」と呼びますが、アウフタクトと呼ぶと書いてある本もあります1。私自身はこの意味で使うことはありませんが、弱拍(=アウフタクト)で始まるからでしょうか。

そして第3は、弱起の曲の冒頭で強拍に先立つ弱拍部分の意味です。音符が1個でも複数でもかまいませんし、1拍分でもそれより長くても短くてもかまいません。このアウフタクトの小節は1小節よりも短くて不完全ですが、最後の小節をこのアウフタクト分、短くして、つじつまを合わせます。

曲の途中においても、フレーズが上拍=弱拍から始まる場合にその部分をアウフタクトと呼ぶのが普通です(厳密にはこれを第4の意味とすべきかもしれません)。譜例1は、我が聖光学院の校歌(関脩作詞、牧野敏成作曲)第7、第8フレーズです。第7フレーズ(せいなる〜)は強拍からですが、最終第8フレーズ(せいこう〜)は第4拍目つまり弱拍から始まっていますね。こういう場合、第8フレーズは譜例1の「4小節目から始まる」とは言わず、「5小節目アウフタクトから始まる」と言うのです。

譜例1 聖光学院校歌(第7&第8フレーズ)

譜例1 聖光学院校歌 第7&第8フレーズ(クリックすると拡大します)

個人的にアウフタクトで思い出すのが、ハッピー・バースデーの曲。この音楽は3拍子で、最初の Happy の部分がアウフタクト。太字部分が強拍で、

Happy / birth-day to  / you,   Happy / birth-day to  / you
——   / ぶんちゃっちゃ / ぶんちゃっちゃ / ぶんちゃっちゃ / ぶんちゃっ…

なのですが、アメリカに住んでいたときに中国人の友達の家で聞いた録音は、アウフタクト無しの3拍子でした2。つまり最初の Happy が強拍になって、

Happy birth-day / to  you,      / Happy birth-day / to  you…
ぶん ちゃっちゃ / ぶんちゃっちゃ / ぶん ちゃっちゃ / ぶんちゃっ…

だったのです! 3拍子は3拍子ですから、これでもちゃんと歌えます。でも、聞いたときの衝撃と混乱は、10年以上経っても忘れられません。

  1. 『音楽通論』(久保田慶一編、アルテス、2009年)の「楽曲がその拍子の第1拍以外から始まっている場合、それを弱起(アウフタクト)という」が一例(117ページ)。
  2. CDだったのかテープだったのか。中国語の歌詞だったはずですが、覚えていません。ピアノではなくバンドの伴奏だったように思います。