19. 12月 2012 · (112) クリスマスに聴きたい音楽 part 5 はコメントを受け付けていません。 · Categories: 聖フィル♥コラム · Tags: , ,

聖光学院新講堂の完成記念《第九》演奏会は、おかげさまで無事終了。響きの良い素晴らしい講堂が出来上がり、聖フィル一同喜んでいます。中高生と一緒に演奏するのは楽しく、学ぶことも多くありました。

今回の演奏会のために声楽パートを歌ってみていて思い出したのですが、アメリカ留学中にティーチング・アシスタントとして使用した外国人用の日本語学習ビデオの中に、アマチュア合唱団が演奏会に向けて語呂合わせで《第九》を練習する場面がありました! 年賀状の説明(クリスマス・カードのように早く投函すると、年内に配達されてしまうことなど)とともに、日本の暮れの風物詩として紹介されていたように思います。

確かに、アメリカ人には説明が必要でしょう。私が過ごしたボストンで12月の音楽と言えば、《メサイア》((6) クリスマスに聴きたい音楽 part 1参照)と《くるみ割り人形》でしたから。ボストン・バレエ団のホームページによると、今年も11月末から年末までに、《くるみ割り人形》公演が40回以上予定されています。赤や緑のクリスマス・カラーで着飾った老若男女の観客の、華やいだ雰囲気が目に浮かびます。

前置きが長くなりました。今年の「クリスマスに聴きたい音楽」は、4月の聖フィル第8回定演で数曲を取り上げる、チャイコフスキーのバレエ音楽《くるみ割り人形》について。

組曲としてのみご存知の方は、なぜクリスマスの音楽なのか、不思議に思われるかもしれませんね。タイトルのくるみ割り人形は、主人公クララがクリスマス・パーティーでもらったプレゼントなのです。夜、ネズミの大群と、くるみ割り人形率いるおもちゃの兵隊たちの戦いが始まり、クララはネズミの王様にスリッパを投げつけて助太刀。ネズミたちが退散するとくるみ割り人形は王子様の姿に戻り、クララをお菓子の国の魔法の城に連れて行くというストーリーです。

《白鳥の湖》《眠りの森の美女》とは異なり、《くるみ割り人形》はチャイコフスキー本人が組曲を編みました。小序曲と、クリスマス・パーティーの場面で演奏される行進曲以外の6曲は、バレエの第2幕、お城で行われるディヴェルティスマン(フランス語で「愉しみ」つまり余興)で使われる音楽。お菓子の国を治める金平糖(フランス語の原題はドラジェ。アーモンドの糖衣菓子)の精の踊り、ロシアの踊り(トレパーク)、コーヒーの精によるアラビアの踊り、お茶の精による中国の踊り、あし笛の踊り、花の精たちの踊りと続きます。

実際のバレエでは、金平糖の精の踊りは第2幕クライマックスのパ・ドゥ・ドゥー(=男女2人の踊り)の一部。ディヴェルティスマンの最後になります。それから、チョコレートの精によるスペインの踊りもあります。この曲は、チャイコフスキーが《くるみ割り人形》第2組曲に入れましたが、こちらは演奏される機会がほとんどありません。

バレエ音楽史においてチャイコフスキーが果たした大きな役割については、改めて述べます。まずは《くるみ割り人形》(組曲だけではなく)全曲を聴いてみませんか。こんなにたくさんあるのかと、驚かれることでしょう。クリスマス・パーティーの高揚した気分と夜の戦いの物々しさ、幻想的な道行き、そしてお菓子の国での趣向を凝らした「愉しみ」を味わってみてください。