13. 7月 2016 · (284) バッハの数 はコメントを受け付けていません。 · Categories: 聖フィル♥コラム · Tags: ,

先日、ヨハン・ゼバスティアン・バッハのチェンバロ協奏曲 全曲演奏会に行きました。バッハのチェンバロ協奏曲って、いくつあるかご存知ですか? なんと全部で14曲もあるのですね。お見それしました1。でも、その多さよりもこの数をさらっと「バッハの数」と表現していたのが、心に残りました。

そう、14はバッハの数です。なぜ?  アルファベットのAから順番に数字を対応させると、BACHのBが2、Aが1、Cが3、そしてHが8。合計14になるからです。彼自身、自分の数として意識していました。たとえば、平均律クラヴィーア曲集第1巻 第1番のフーガ。

平均律クラヴィーア曲集とは、長調短調各12ずつ、24の調全てのプレリュードとフーガのセットを、ハ長調から順番に収めたもの。第1巻はケーテン時代の1722年、第2巻はライプツィヒ時代の1742年に完成されました。ハンス・フォン・ビューローが「ピアノの旧約聖書」と呼んだことも知られています。

平均律第1番ハ長調の4声フーガでは、フーガ主題はアルト声部に始まります(譜例1)。「ド-レ-ミ-ファ-ソ-ファ-ミ-ラ-レ-ソ-ラ-ソ-ファ-ミ」と、計14個の音から成っていますね。この曲集へのバッハの署名とみなされます2

譜例1:J.S.バッハ作曲 平均律クラヴィーア曲集第1巻第1番ハ長調 BWV846 よりフーガ冒頭

譜例1:バッハの署名(平均律第1巻 第1番ハ長調 BWV846 よりフーガ冒頭)

ヨハンとゼバスティアンの頭文字、J(9番目)とS(18番目)を加えると、9+8+14で413。14の逆!  平均律第1巻を締めくくる、第24番ロ短調のプレリュードとフーガの小節数合計は、47+76で123。ハリー・ハーンは、これが41の3倍であり、詩篇41が詩篇の第1部を閉じるものであったため、バッハはこれに従って曲集を閉じたと書いています4

でも、14はともかく、41や123をバッハが意識したのかどうか。2巻最後のプレリュードとフーガを調べてみましたが、小節数の合計は66+100の166小節。41の4倍より微妙に(2小節)多いのです。詩篇第2部は第72までありますが、その倍数でもありません。

音符や声部、小節などの数をさまざまに計算し、キリスト(CHRISTUS = 112)、クレド(CREDO = 43)のような数も含めて意味づけを試みると、際限が無くなります。私には、詩篇と小節数を結びつけるハーンの説よりも、平均律第1巻最後のフーガと、第2巻最初のフーガの主題の音符の数が、どちらも21であることの方が興味深く感じられました。ちなみに、バッハの名前全て(JOHANN SEBASTIAN BACH)を数字に置き換えると、158。この総和(1+5+8)も14です。神秘的ですね。

  1. 4台用が1曲、3台用2曲、2台用3曲、そして1台用が8曲で、BWV1052〜1065です。
  2. 岸啓子「バロックの器楽」『はじめての音楽史 増補改訂版』音楽之友社、2009年、67ページ。
  3. ラテン語とは異なりドイツ語にはIとJが両方存在するのに、IもJも9と数えます((291) 練習番号Jが無い理由参照)。バッハが精通していたと考えられる中世ユダヤ教の「カバラ」と呼ばれる伝統では、このような数え方をするということでしょうか。
  4. 堀朋平「象徴法と引用」『バッハ キーワード事典』春秋社、2012年、126ページ。

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