16. 9月 2015 · (252) 第1楽章第1主題 in パッサカリア ブラ4の秘密2 はコメントを受け付けていません。 · Categories: 聖フィル♥コラム · Tags: , ,

バロック時代の古めかしい変奏形式パッサカリアで作られた、ブラームスの交響曲第4番終楽章。でもこの楽章、ソナタ形式とも考えられるのでしたね((251) ただのパッサカリアではない!参照)。終楽章には、実は同じ交響曲の第1楽章第1主題が登場します。ただし、すぐにわかる形で引用されているわけではありません。変形されています。

「3度下がって6度上がる」で始まる、第1楽章第1主題。ヴァイオリンのオクターヴ・ユニゾンが、切なく響きます。冒頭4小節の中の、上行した音(2小節目のドなど)をオクターヴ下の同じ音に入れ替えると……。シ−ソ−ミ−ド−ラ−ファ♯−レ♯(−シ)と、3度下降が連続する形になります(同じリズムで同じように演奏されても、これでは切なさはあまり感じられませんね)。

終楽章パッサカリアに出て来る第1楽章第1主題は、「下がって上がる」切ない旋律ではなく、3度下降の変形バージョン。そう、最後の2つの変奏です。第29変奏では弦楽器がピッツィカートの後打ちで(譜例1参照)、第30変奏ではチェロと1拍遅れのヴァイオリンが、ミ−ド−ラ−ファ♯−レ♯−シ−ソ−ミ−ド−ラ−ファ♯−レ♯ の3度下降型を弾いています。交響曲の1番初めに聴いた旋律が、最後の最後(コーダの前ですが)に回帰。しかも、わかる人にだけわかる形で。「構築型」ブラームス、お見事!

譜例1:ブラームス作曲 交響曲第4番 終楽章 229〜36小節

譜例1:ブラームス作曲 交響曲第4番 終楽章 230〜36小節

ところで、第1楽章冒頭4小節の3度下降形 シ−ソ−ミ−ド−ラ−ファ♯−レ♯(譜例2b)、順番を入れ替えてみてください。ホ短調の音階になります(譜例2c)。つまりこの第1主題、主調の音階の7つの音をすべて1回ずつ使って構成されているのです。「和声的短音階のすべての音を重複することなく使いきる……これはシェーンベルクが提唱した『12音技法』に、あと一歩のところまで近づいている」1

うーん、十二音技法まではまだちょっと遠い気もしますが((97) ドレミが平等社会だったら:十二音技法参照)、ブラームスが意図的に作ったことは確か。「良い旋律を思いついたら、それが偶然、音階の7音を1回ずつ使っていた」なんて、有り得ません。その後(5〜8小節)、同じ音のオクターヴ跳躍をはさみながらミ−ソ−シ−レ−ファ−ラ−ドと進みます。3度進行の上行型ですから、1〜4小節の下降型と対。さらに!!  こちらは入れ替えると、レもファも ♯ 無しのミ−ファ−ソ−ラ−シ−ド−レ−ミ。これは、第2楽章冒頭で使われるフリギア旋法ですね(第3楽章のハ長調の7音全てを1回ずつ使ったと考えることもできますが、ミから始まっています。2015/09/23 追記)。交響曲が始まったばかりのところで、さりげなく予示。ブラームスって本当に「構築型」の作曲家です。

譜例2:同第1楽章第1主題とその変形

譜例2:同第1楽章第1主題とその変形

  1. 三宅幸夫『Brahms: Symphonie Nr.4 ミニチュア・スコア解説』音楽之友社、2004、viiページ。譜例2も同ページ。

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