18. 3月 2015 · (229) カルメン第2組曲〈ノクチュルヌ〉 はコメントを受け付けていません。 · Categories: 聖フィル♥コラム · Tags: , ,

(228)《カルメン》音楽史クイズでも書いたように、4月の聖フィル定演では、カルメン組曲を抜粋で演奏します。どの曲かは当日のお楽しみですが、有名な2曲〈ハバネラ〉と〈闘牛士の歌〉は、もちろん入っていますよ。オペラの中で歌われる状況を簡単に説明しましょう。〈ハバネラ:恋は野の鳥〉(第1幕)は、セビリアのたばこ工場の広場にいる大勢の女工たちや兵隊たちの前で、ジプシー女のカルメンが、初めて会った真面目なホセの気を引きながら歌う曲。情熱的で妖しく奔放なヒロインのキャラクターが印象づけられます。一方の〈闘牛士の歌:諸君の乾杯を喜んで受けよう〉は、第2幕で初登場する花形闘牛士エスカミーリョが、闘牛について語る歌。勇ましくて華やかです。下の歌詞の日本語訳を参考にしてください1

今回取り上げるのはポピュラーな曲ばかりと言いたいところですが、実は抜粋の中で、私が知らなかった曲が1つありました。カルメン第2組曲の3番目〈ノクチュルヌ〉。原曲は、第3幕のミカエラのアリア。歌の代わりにヴァイオリン独奏が、叙情的なメロディーを奏でます。ノクチュルヌ=夜想曲ですから、場面は夜のはず。ホセのフィアンセであるミカエラが、どういう状況でどのような内容の歌を歌うの??

調べてみたら、ミカエラの〈なんの恐れることがありましょう〉は夜に山の中で歌うアリアでした。彼女は、密輸団の仲間に入ってしまったホセに母親の危篤を知らせるためにやって来たのです。案内人を帰した後は、暗い中1人ぼっち。寂しくて怖くて「勇気を与えてください」と神に祈るのが、ホルンの柔らかい前奏で始まるゆったりした部分。短調に変わって(下の動画の1:46くらいから)、ホセを堕落させたカルメンを「近くでみてやりたい」「危険な女、でも美しい」「怖がってはいけない」「きちんと話をしてやる」。ヴァイオリンとヴィオラによる動きのある伴奏(分散和音の3連符やシンコペーション)は、決心したり弱気になったりと揺れる心を表わしているよう。その後、ゆったりした部分が戻ります。

実は、《カルメン》の中でアリアと名付けられた曲はこの1曲だけ(他はシャンソン=歌とか、二重唱など)。また、ミカエラは台本作者たち(メイヤックとアレヴィ)が加えたキャラクターで、原作のメリメの小説には登場しません。このアリアは地味ながら、ホセを想うミカエラの一途さがうまく表現されています。器楽曲としてノクチュルヌを聴いたり弾いたりするときにも、(妖艶なヒロインと対照的な)可憐で健気なミカエラを、思い出してくださいね。

  1. ハバネラ(第1幕、カルメン、合唱と一緒に)。安藤元雄訳(ミカエラのアリア以外の文中も)

    恋はいうことを聞かない小鳥 飼いならすことなんかだれにもできない
    いくら呼んでも無駄 来たくなければ来やしない。
    おどしてもすかしてもなんにもならない お喋りする人黙ってる人
    そのむっつり屋さんの方が気に入った なんにもいわなかったけどそこが好きなの。

    クプレ(〈闘牛士の歌〉第2幕、エスカミーリョ)

    この乾杯のお返しをさせてください。なぜってみなさん 軍人さんと
    闘牛士とはうまが合うもの、どちらも戦いが楽しみだから。

    闘牛場は満員、お祭りの日 闘牛場は満員、上から下まで。
    見物人はわれを忘れて大騒ぎ そのどよめき!
    わめいて叫んで足を鳴らして ついに興奮のるつぼとなる。
    なぜって今日は武勇のお祭り 血気さかんな人々のお祭りだから。
    そうら!構えはいいか!そらそら!ああ!

    トレアドール、構えはいいか トレアドール、トレアドール!
    だが忘れるな 戦いながらも忘れるな、黒い瞳がおまえを見てるぞ
    恋がおまえを待ってるぞ。トレアドール!
    恋が 恋がおまえを待ってるぞ!

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