14. 1月 2015 · (220) マイスタージンガー、ハンス・ザックス はコメントを受け付けていません。 · Categories: 聖フィル♥コラム · Tags:

《ニュルンベルクのマイスタージンガー》の主人公、ハンス・ザックス。靴屋の親方ですから、マイスタージンガー((219) マイスタージンガーになるには?参照)たちの中でも役所の書記より階層的に下のようですし、金細工師ほど裕福でもないでしょう。でも、規則から逸脱した歌の良さを認める、柔軟な考えの持ち主。市民にとても敬愛されています。本当はエーファを好きなのに、愛し合っている騎士ヴァルターと結ばれるよう、彼にアドヴァイスしわがままをいさめて若い2人を助けます。

図1:ハンス・ザックス(1545)

図1:ハンス・ザックス

理想の男性像のような(?!)ハンス・ザックスですが、彼は実在したドイツの詩人兼マイスタージンガー1。1494年11月5日に、ニュルンベルクに生まれました。1501年から09年までラテン語学校に通った後、靴職人の仕事を学び(=徒弟)、11年から15年までドイツ中を旅しながら腕を磨きました(=職人)。ニュルンベルクに戻り、1520年に靴屋の親方に。マイスタージンガー組合には、1509〜11年という早い時期(10代ですね)に所属。リネン職人ヌンネンベックに学びました。

彼が生まれた頃、南ドイツの帝国都市ニュルンベルクは、経済的・文化的発展の絶頂期。15世紀から続くこの地のマイスタージンガー組合は、アウグスブルク、ウルム、ブレスラウ、コルマール、ストラスブルクなどの組合の手本になっています。

ハンス・ザックスは多作家でした。1576年に亡くなるまでに彼が作った詩は、6,000以上。そのうち、マイスタージンガーの歌であるマイスターゲザンクは、4,286(他は、風刺詩、教訓詩、悲劇、喜劇、謝肉祭の劇など)。ただし、これは4,286種類の歌ということではありません2。1つの Ton(旋律)で複数の詩が歌われたのです。彼が使った Ton は全部で275種類。その中で、彼が作曲した Ton は、13種類でした。1513年にブラウナウで作った〈銀の曲 Silberweise〉が最も有名だそうです(Weise も旋律の意味)。

図2:ハンス・ザックス(1576)

図2:ハンス・ザックス(1576)

《ニュルンベルクのマイスタージンガー》第3幕第5場。華やかな歌合戦の場にザックスが最後に登場。皆は起立して〈目覚めよ、朝は近づいた!  Wach auf, es nahet gen den Tag!〉を合唱し、彼を迎えます。この歌詞は、実際にザックスが書いた『ヴィッテンベルクの鶯』の一部。ヴァーグナーは、ザックスが同じ時代を生きた宗教改革者マルティン・ルターを讃えた長編詩を使ったのです。

ハンス・ザックスの肖像としては、図1が有名ですね。でも、イギリスの音楽事典には、これではなく図2が載っていました3。彫られた年が30年以上も隔たっているとはいえ(図1は下方に1545と見えます)、ずいぶん感じが違いますね。

  1. Brunner, Horst, ‘Sachs, Hans,’ The New Grove Dictionary of Music, 2nd ed., vol. 22, Macmillan, 2001, p. 76.
  2. Brunner, Horst, ‘Ton (i),’ The New Grove Dictionary of Music, 2nd ed., vol. 25, Macmillan, 2001, p. 580.
  3. 上記註1に同じ。Jost Ammanによる版画。

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