07. 1月 2015 · (219) マイスタージンガーになるには? はコメントを受け付けていません。 · Categories: 聖フィル♥コラム · Tags:

第12回定期演奏会では、ヴァーグナーの楽劇《ニュルンベルクのマイスタージンガー》第1幕への前奏曲を取り上げます。マイスタージンガーはドイツ語で「親方(Meister)歌手(Singer)」。音楽事典によると「14世紀から17世紀にかけてドイツで栄えた世俗的な文芸および音楽運動を担った詩人・歌手のこと」1

マイスタージンガーは、主に中流あるいは下層階級の市民(聖職者や弁護士も含まれていましたが)。都市に定住し自分の職業に従事するかたわら、その市のマイスタージンガー組合(ギルド)に属していました。メンバーは5種類に区別されます。最上級はもちろん親方(Meister)。その下に詩人(Dichter)、歌手(Singer)、仲間(Schulfreund)と続き、1番下は弟子(Schüler)。組合はドイツ中に組織され、その都市の当局に厳しく管理されました。

ニュルンベルクの16・17世紀の組合規則は、以下のようなものでした2。年長の12人のマイスタージンガーが組合の中心になります。役員は、記録係3人(その中で最も年若い者が書記の役目を果たす)と、会計2人。毎年、聖トマスの日(12月21日)の直前の日曜日に、会計により年次収支が発表され、会費の支払い、役員選挙、新メンバー受け入れが行われます。

公開コンサート(Singschulen の文字通りの意味は「歌学校」)は、通常毎月1回、日曜日の昼の礼拝後に開催。ニュルンベルクでは16世紀以降、使われていないさまざまな教会が会場となり、ポスターで告知されました。メインの歌唱(Hauptsingen)では、聖書に基づく、20行以上の長さの旋律(Ton)を歌わなければなりません。記録係は黒い幕で覆われた小部屋の中にすわり、歌がルター派聖書の内容と言葉に一致しているかを審査。歌詞と演奏がタブラトゥーア(成文化された厳格な規則)と一致しているか、旋律が正しく歌われているかも記録します。間違いの数が最も少ない者が勝ち。コインを吊るした銀の鎖が与えられ、次のコンサートの記録係になることが許されました(銀の鎖は、次回の優勝者へ)。

マイスタージンガー組合のメンバーになるには、どうすればよいでしょうか? まず第一に、メンバーのだれかの弟子にならなければ。そして、たくさんの旋律(Ton)と、タブラトゥーアの規則を覚えなければなりません。この Ton は伝承により蓄積され、1630年にはおよそ1400種(!!)3。実は、Ton を作れなければマイスタージンガーになれないというヴァーグナーの設定は、正確ではありません。彼らはほとんどいつも、すでに存在する Ton を使って歌いました。詩作も義務ではなく、多くのマイスタージンガーたちは、他の人が作った歌を歌っていたのだそうです4

  1. 丹羽正明「マイスタージンガー Meistersinger」『音楽大事典5』平凡社、1983、2394。
  2. Brunner, Horst, ‘Meistergesang,’ The New Grove Dictionary of Music, 2nd ed., vol. 16, Macmillan, 2001, p. 298. 他の組合の規則も基本的には同じでしたが、ニュルンベルクで15世紀にこのように組織されていたかどうかはわかりません。
  3. 前掲書、p. 296。
  4. 同上。

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