05. 11月 2014 · (210) 《オケコン》のルーツ はコメントを受け付けていません。 · Categories: 聖フィル♥コラム · Tags: , ,

音大の学生さんたちに講義を頼まれて、バルトーク(1881〜1945)の《管弦楽のための協奏曲》通称《オケコン》(1943)を分析中。さまざまな要素が絡み合った、エキサイティングな曲です。でも「題名が既にわけわかんない〜〜」という悲鳴が……。作曲の背景や音楽の内容よりも、まずはタイトルから。

協奏曲、コンチェルトは(もともとは声楽曲を指していましたが)、1つあるいはそれ以上の独奏楽器とオーケストラのためのジャンル。ピアノ協奏曲ならピアノとオケ、ヴァイオリン協奏曲ならヴァイオリンとオケ。「オーケストラのための協奏曲」ならオケとオケ……?? 確かに理屈が通らないかもしれません。でも、初演の際にバルトークご本人が「この交響曲的作品のタイトルは、この作品の中で単一の楽器、あるいは一群の楽器が、『協奏的』、独奏的に扱われる傾向がある、ということに由来している」と解説しています1。オーケストラの中の楽器が代わる代わるソリスト役を務める曲ということ。第2楽章「対による提示」(以前は「対の遊び」)は、特に協奏的。

特定の独奏楽器を持たない協奏曲というジャンルは、実はかなり古くから存在します。そう、リピエーノ・コンチェルトですね。え、リピエーノ・コンチェルトをご存じない?! バロック時代に作られた、複数の独奏楽器を持つ協奏曲がコンチェルト・グロッソ((165) 交響曲?協奏曲? サンフォニー・コンセルタント参照)。その、コンチェルト・グロッソの演奏に必要な伴奏楽器グループを、リピエーノ・オーケストラと呼びます(独奏楽器グループは、コンチェルティーノ)。リピエーノ・コンチェルトは、リピエーノ・オーケストラだけで演奏する協奏曲、つまりソリストがいない協奏曲ということ。

そんなの、協奏曲じゃないだろ!と怒らないでください。たとえば、バッハのブランデンブルク協奏曲第3番。ヴァイオリンとヴィオラとチェロ3声部ずつと通奏低音のための作品で、ブランデンブルク「協奏曲」の1つなのに、独奏楽器はありません。でも、合奏しながらいろいろなパートがソロを受け渡していきます。これがリピエーノ・コンチェルト。後に交響曲の源の1つとなります。

華やかで名人芸的な《オケコン》と、堅実な弦楽アンサンブルであるブランデンブルク第3番を結びつけるのは、難しいかもしれません。でも、第1次世界大戦後の新古典主義の流れの中で、バルトーク以外の作曲家にも作られた《管弦楽のための協奏曲》の原型は、このリピエーノ・コンチェルト。バロック時代のコンチェルト・グロッソの変化形です。特別なソリスト無しにいろいろな楽器のソロを楽しめる、お得で魅力的な曲種ですね。

  1. 訳は伊東信宏「ミニチュア・スコア解説」『バルトーク:管弦楽のための協奏曲』音楽之友社、2012、v。