09. 7月 2014 · (193) アニマートとアニマンド はコメントを受け付けていません。 · Categories: 聖フィル♥コラム · Tags:

「アニマートとアニマンドを弾き分けて!」という田部井先生のご注意。次の定期演奏会で取り上げるチャイコフスキーの交響曲第5番第2楽章には、animato と animando が何度も出て来ます。animato なら「活気をもって、生き生きと」 1。でも、楽語事典を調べても animato しか載っていないか、 animato も animando も「生き生きと」。これでは弾き分けられません。

この2つ、確かに大まかな意味は同じ。どちらも「生気を与える、生き生きとさせる、促進させる」などの意味を持つイタリア語の動詞 animare が元。animato はその過去分詞形。「生気を与えられた」→「生き生きとした」ですね。一方の animando はジェルンディオ。英語で言えば進行形を作る現在分詞(+ing)として働きます。直訳すると「生気を与えている」→「生き生きとしている」?

訳し分けるのは難しいですが、ニュアンスの違いはわかりますよね。animato は「(すでに生気を与えられたので)初めから生き生きしていて、ずっとそのまま生き生き」。一方の animando は「(生気を与えている最中で)さらにもっと生き生きしていく」。変化無しと変化中というわけです。

「生き生きと」(con anima という言い方もありますね)はともかく、「もっと生き生きしていく」のを音楽でどう表現するのか。ヴェルディはレクイエムにおいて sempre animando や poco a poco animando など、アニマンドをスピードと興奮をたくさん増やすという意味に使っています2。「活発に→動きがある→速くしていく」ということでしょう3。だから、チャイコフスキーでもアニマンドが「前に進む」というような意味になるのですね。

アニマートと異なり、アニマンドは主に19世紀に使われました。他にも、「アンド」や「エンド」で終わるクレシェンド、デクレシェンド、ディミヌエンド、リタルダンド、ラレンタンド、アッチェレランド、アラルガンド、ストリンジェンドなどがジェルンディオ。次第に変化していく意味を持つ楽語です。

  1. 石桁真礼生他『楽典』音楽之友社、1965、159。
  2. Fallows, David, ‘Animato,’ The New Grove Dictionary of Music, 2nd ed., vol. 1, Macmillan, 2001, 686.
  3. 前掲書では Animato の定義を「速度と表情記号 A mark of tempo and expression」とし、ヴェルディなどでは animato を単純に「より速く」の意味で使ったかもしれないと書いています。また、animato、animando、con anima がチャイコフスキーの円熟期の作品によく使われ、交響曲第5番第2楽章がその好例であるとも言及しています。