25. 6月 2014 · (191) 《ピアノとフォルテのソナタ》再び はコメントを受け付けていません。 · Categories: 聖フィル♥コラム · Tags: , ,

前回コルネットとトロンボーンとヴァイオリンの8重奏でとりあげた、ガブリエーリの《8声のためのピアノとフォルテのソナタ》について、3点補足します。まず第1に、これが教会の礼拝で使われる宗教曲であることを忘れないでください。

16世紀半ば以降、イタリア各地で対抗宗教改革が行われていました。カトリックの浄化を目指して開かれたトリエント公会議では、「歌詞が聴き取りにくいから、典礼(礼拝)においてポリフォニー(多声音楽)の使用を禁止し、グレゴリオ聖歌のみを歌うことにしよう」という過激(!!)な原点回帰の提案もあったほど1(《教皇マルチェルスのミサ曲》を作ってそれに反論し、ポリフォニーの救い主とされたのが、私がペンネームに名前をお借りしているパレストリーナです。あくまで伝説ですが)。しかし、ローマから遠いヴェネツィアでは、ポリフォニーどころか、コルネットやヴァイオリンなど世俗の楽器も用いた器楽曲が、教会で演奏されていたのですね。

第2にこの曲は、1597年に出版されたガブリエーリの『サクラ・シンフォニーア』に納められていること。『サクラ・シンフォニーア』とは「聖なる(複数の)響き」つまり宗教曲集ということですね。(171) いろいろなシンフォニーアに書いたように、ラテン語の歌詞を持つ声楽曲がメインで、45曲も収められています。器楽曲は、カンツォーナ(最後の母音を省略してカンツォンと表記)14曲とソナタ2曲の計16曲。

譜例1:G. ガブリエーリピアノやフォルテのソナタ》第7声部(「サクラ・シンフォニーア》(ヴェネツィア、1598)より)再掲

譜例1:G. ガブリエーリ作曲《ピアノとフォルテのソナタ》第7声部 『サクラ・シンフォニーア』(ヴェネツィア、1598)より(再掲)

当時の楽譜の慣例に従って、声部数が少ない曲(6声用)から順番に並べられています。最も曲数が多いのが8声用。声楽曲19曲の後に5曲のカンツォーナが続き、《ピアノとフォルテのソナタ》は最後。その後に、10声用の声楽曲、器楽曲、12声用の声楽曲、器楽曲、14声用声楽曲、15声用の声楽曲、器楽曲、16声用声楽曲と続きます。器楽も声楽と同等の扱い受けていますね。器楽曲には歌詞が無いので、ページが白っぽく見えますが、その中でピアノとフォルテのソナタ》だけ、ところどころに「Pian」「Forte」と印刷されています(譜例1)。

第3に補足したいのは、『サクラ・シンフォニーア』のレイアウト。スコアではなく、ペトルッチのオデカトンのような、見開きに全声部を納める聖歌隊用レイアウト(「クワイアブック・フォーマット」と呼びます。(184) 500年前の楽譜参照)でもなく、1声部ずつ分かれた「パートブック」スタイルです。この時代、声楽曲もほとんどがパートブックの形で出版されましたが、16声部の曲も含まれる『サクラ・シンフォニーア』は、全部で12分冊! 1冊も失くさないように、教会の財産として大切に管理したのでしょう。

14声部以上の曲は、1分冊に2パート印刷されています。巻末に目次もありますが、使いやすいように各分冊の同じページに同じ曲が印刷されています(そのため、不要なページ数は省かれ、たとえば第12分冊は50ページから始まります)。《ピアノとフォルテのソナタ》のような声部数が多く長い曲を、小節線が無い当時の楽譜で演奏するのは、さぞかしスリリングだったでしょうね。

  1. Nagaoka, Megumi, The Masses of Giovanni Animuccia: Context and Style, Ph.D. Diss., Brandeis University, 2004, pp.2-3.

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