18. 6月 2014 · (190) コルネットとトロンボーンとヴァイオリンの八重奏 はコメントを受け付けていません。 · Categories: 聖フィル♥コラム · Tags: , , ,

ルネサンス音楽史の必修曲《8声のためのピアノとフォルテのソナタ》。作曲者ジョヴァンニ・ガブリエーリ(c.1554-7〜1612)は、アドリアン・ヴィラールト(c.1490〜1562)が創始したヴェネツィア楽派の1人です1。ジョヴァンニは、1584年にサン・マルコ大聖堂の臨時オルガン奏者になり、翌年、叔父アンドレアが第2オルガン奏者から第1オルガン奏者に昇進すると、第2奏者に。1586年のアンドレアの死後、亡くなるまで第1オルガン奏者を続けました。1597年に出版された《ピアノとフォルテのソナタ》は、

    • ソナタというタイトルを持つ最初期の曲
    • 強弱が指定された最初期の曲
    • 楽器名が指定された最初期の例

として重要。16世紀、器楽はもっぱら声の代わりか声楽の補助。手近にある楽器を使って演奏しました。このように楽器が指定された曲は、非常に珍しい(=新しい)のです。楽器編成は、

    • コルネット(ツィンクとも。現在のコルネットとは異なる円錐形の楽器):1
    • トロンボーン(サックバットとも):6
    • ヴァイオリン:1

えっ!! 金管アンサンブルの中に、1つだけヴァイオリン?! 何かの間違いでは?? いいえ、楽譜にもはっきりと「Violino」の指示(譜例1右上の矢印先。クリックで拡大します)。

譜例1:ジョヴァンニ・ガブリエーリ《8声のピアノやフォルテのソナタ》第7声部(「サクラ・シンフォニーア》(ヴェネツィア、1598)より)

譜例1:G. ガブリエーリ《ピアノとフォルテのソナタ》第7声部(ヴェネツィア、1597)

サン・マルコ大聖堂でミサを執り行うために楽器奏者が雇われ初めたのは、1568年2。1586年暮れの支払い記録には、12人もの楽器奏者が言及されています。コルネット奏者とトロンボーン奏者に混じって、ヴァイオリン奏者が2人3。1603年のクリスマス・ミサの支払い記録にも、コルネット4、トロンボーン5、ファゴット1とともに、ヴァイオリン2とヴィオローネ(コントラバスの先祖)1が。オルガンとトロンボーン以外は世俗の楽器((42) 神の楽器 ? トロンボーン参照)。コルネットもヴァイオリンも、ファゴットもヴィオローネも、たいして違わなかった?

ところで譜例1の第7声部には、ヴァイオリンの最低音ソよりも低い音が使われています(丸で囲った部分)。音部記号もアルト記号。ヴァイオリンと指定しているのに、不思議ですね。

  1. 個人的な話ですが、私、ヴィラールトの声楽曲集で修士論文を書きました。
  2. Ongaro, Giulio, ‘Venice,’ The New Grove Dictionary of Music, 2nd ed., vol. 26, Macmillan, 2001, 401.
  3. Bryant, David, ‘Gabrieli, Giovanni,’ The New Grove Dictionary of Music, 2nd ed., vol. 9, Macmillan, 2001, 392.