11. 6月 2014 · (189) 第1主題=第2主題 !? のソナタ形式 はコメントを受け付けていません。 · Categories: 聖フィル♥コラム · Tags: ,

下の譜例1は、以前、聖フィルで取り上げたモーツァルトの交響曲第39番変ホ長調 K.543 の終楽章。左はヴァイオリン2つだけで始まる冒頭部。ソナタ形式の第1主題とその伴奏です。右は、新しい調((72) 第2主題は「ようこそ」の気持ちで参照)変ロ長調でファースト・ヴァイオリンが奏でる、第2主題。あれれ、4度下がった(=5度上がった)だけで、第1主題と変わりません。旋律だけではなく、セカンド・ヴァイオリンの伴奏まで全く同じ。休符以降は異なるものの、メロディーで最も重要な冒頭部1小節間はそっくり。

譜例1:モーツァルト作曲交響曲編ホ長調 K. 543 終楽章の第1、第2主題

譜例1:モーツァルト作曲交響曲編ホ長調 K. 543 終楽章の第1、第2主題

ソナタ形式の第1主題と第2主題は、たいてい対照的な性格で作られます。たとえば、第1主題が元気良くじゃーん!と出るなら、第2主題はドルチェで細やかに。第1主題が16分音符でせわしなく動くなら、第2主題は2分音符などでのんびりと。第1主題がスタッカートではずんだ感じなら、第2主題はレガートにという具合。オーケストラ曲であれば、第1主題は全部の楽器(トゥッティ)、第2主題は木管楽器(あるいはヴァイオリン)だけというようなコントラストも可能。もちろん、第1主題がピアノで密やかに、第2主題がフォルテで堂々とというようなケースも。いずれにしろ、全く同じく始まる2主題なんて有り得ない?!

ところが、初期のソナタ形式では2主題間のコントラストは重視されませんでした。ソナタ形式で最も重要なのは、調のコントラスト。前半部分で主調から対立調へ転調し、後半部分で対立調から主調に戻って終わるという型さえしっかりしていれば、この終楽章のように第1主題と第2主題が同じでも、構わなかったのです。

このような例は、単一主題ソナタ形式とよばれます。ほとんどの場合、第2主題部後半などで新しい主題が使われるので、厳密な意味での単一主題ソナタ形式の曲は多くありません 1。でもこの終楽章では、提示部をしめくくるコデッタ主題にも、第1主題と第2主題に共通な冒頭の7音音型が使われていますから、単一主題ソナタ形式にかなり近いと思います。主題は1つだけで、あとはそれから派生した旋律でソナタ形式を構成するって、経費(??)節約にはなりますが、作るのはかえって難しそうですね。

  1. Webster, James, “Sonata form,” New Grove Dictionary of Music, 2nd ed., vol. 23, Macmillan, 2001, 692.

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