23. 4月 2014 · (182) 何しにコンサートへ行ったのか はコメントを受け付けていません。 · Categories: 聖フィル♥コラム · Tags:

図1は、1843年のパリ音楽院演奏協会コンサートの様子です。パリ音楽院ホールのステージ上の2人の男。ステージに対して斜めに立っていますね。客席におしりを向けるのは失礼だからでしょう((141) どこを向いていたのか参照。メンデルスゾーンと逆に、左側をオケに向けていますが)。

図1:パリ音楽院協会演奏会、パリ音楽院ホール、1840

図1:パリ音楽院協会演奏会、1843(クリックで拡大します)

中央の指揮者は、フランソワ=アントワーヌ・アブネック(1781〜1849)。パリ音楽院でヴァイオリンを学び、首席で卒業。パリ・オペラ座オーケストラでコンサート・マスター、1821年から監督、24年から46年まで指揮者を務めます。1823年にパリ音楽院演奏協会が発足すると、指揮者に就任。25年からパリ音楽院のヴァイオリン科教授に。左隣はコンサート・マスターでしょう(コン・マスの重要さがわかりますね)。彼も斜めに立っています1

舞台奥にはせり台。座っている人数は異なりますが、(174) オーケストラの楽器配置(パリ、1828)と同じ4段です。最上段にいるのはトロンボーンとオフィクレイド、打楽器、コントラバスのはず。中央の2人(打楽器?)以外、左側に楽器の先が長く突き出ているように見えます(コントラバスやオフィクレイドとしても、ちょっと長過ぎでは? トロンボーンとは角度が合いませんね)。ステージ手前に歌手たちがこちらを向いて座っています。向かって右が女性、左が男性ということは、(174)の配置図と逆2

天井には大きなシャンデリア。奥の3つのうちの真ん中のシャンデリアが少し小さいのは、両側よりも奥に付いているからでしょう。ステージ全体を明るく照らすためですね。客席側のシャンデリアは手前に1つだけ。これなら客席は暗く、明るいステージが引き立ちます。

ところで、右下隅に注目。女性が後ろを振り向いています。指揮者やコン・マスの姿勢から、明らかに何か演奏中なのに。左下隅でも同様に、後ろの男性を振り向く女性。演奏中も互いに見つめ合っている……というよりも、2人でおしゃべりしていると考える方が自然。よく見ると、バルコニーにも舞台とは異なる方を向いている客がちらほら。右上隅の女性2人は、何かお話中。

実は、19世紀の音楽会はかなり騒がしかったそうです3。お金を払えば誰でも行ける公開演奏会。社交の場と考える人も多かったのです。それに、当時のプログラムを思い出してください。独唱あり協奏曲あり即興演奏あり合唱あり。誰でも何かしら気に入るように配慮されたごった煮のプログラム。逆に言えば、あまり興味の無い曲も含まれていたということ。興味がある曲以外は、おしゃべりしている方が有意義と考える人もいたのでしょう。というわけで、コンサートへ行く目的が音楽を聴くためだけではなかったというのが、今回の結論です。

  1. 1828年から60年までのコン・マスは、Tilmant aîné (Théophile Tilmant) でした。
  2. (174) の配置図も、今回の図1も、パリ音楽院演奏協会の研究 Holdman, D. Kern, The Société des Concerts du Conservatoire (1828-1967), http://hector.ucdavis.edu/sdc/ から。写真ではないので裏焼きということは無いですね。
  3. 西原稔『新編音楽家の社会史』音楽之友社、2009、100ページ。

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