19. 3月 2014 · (177) オルガン付きの交響曲 はコメントを受け付けていません。 · Categories: 聖フィル♥コラム · Tags: , , ,

第10回聖フィル定期演奏会のメインは、サン=サーンスの交響曲第3番《オルガン付き》。オルガン、どうするの?!と心配された方、どうぞご安心を。聖光学院はカトリック的精神にもとづく学校。ミサを行えるように、新講堂ラムネホールの客席右側上方にベネディクト・オルガンが設置されていているのです。

交響曲のオーケストラにオルガンを加えるという発想、いったいどこからきたのでしょう。サン=サーンスはリストに即興演奏を絶賛された、すご腕オルガニスト。パリのオルガニストの最高位ともいえるマドレーヌ教会の奏者を務めていました。でも、オルガニストを務めた作曲家は彼だけではありません。たとえばブルックナーも卓越したオルガニストでしたが、交響曲にオルガン・パートを入れることはありませんでした(交響曲自体がオルガン的な響きをしていますが)。

オルガン・パートが加わったオーケストラ作品として、リストの交響詩《フン族の戦い》(1857)があります。でも、楽譜を見ると、オルガンは曲の最後で40小節ほど使われる程度。演奏量、重要度、存在感、どれをとっても《オルガン付き》交響曲とは比較になりません。

サン=サーンスにとって「交響曲はある精神性を湛えた音楽でなければなら」ず、「ブルックナーがコラールを使ったように、サン=サーンスはパイプオルガンの音響を必要とした」という指摘も1。でも、3曲の番号付き、2曲の番号無し、そして未完の3曲の交響曲のなかでオルガンを使ったのは、最後に作られたこの3番だけ。精神性・宗教性の象徴であることは確かですが、オルガンを入れることを思いついたのは、初演会場にどのオルガンがあるかを知っていたからではないかというシンプルな推測の方が、説得力があるように思います2

作曲を委嘱したロンドンのフィルハーモニック協会は、1869年に、約800人収容のハノーヴァー・スクエア・ルームから、2,000人以上(!!)を収容できるセント・ジェイムズ・ホール(他に小ホールも2つ)に、本拠を移しました。サン=サーンス自身、1879年にこのホールのオルガンを演奏したことがあるそうです。図1は、セント・ジェイムズ・ホールのオープン時の合唱コンサート。舞台上に立派なパイプオルガン見えます。サン=サーンスの交響曲《オルガン付き》はここで、1886年5月19日に初演。作曲家自身が(オルガンではなく)指揮をし、大成功を収めました3

図1:セント・ジェイムズ・ホールのオープニング時の合唱コンサート、Illustrated London News、1958年4月10日

図1:セント・ジェイムズ・ホールのオープニング時の合唱コンサート、Illustrated London News、1958年4月10日

  1. 田村和紀夫『交響曲入門』講談社選書メチエ、2011、175ページ。
  2. 井上さつき『サン=サーンス:交響曲第3番ハ短調作品78、音楽之友社ミニチュアスコア、解説』、音楽之友社、2001、ivページ。
  3. 実は初演時には、彼も演奏したこのオルガンとは異なる新しいオルガンが設置されていて、サン=サーンスが意図した効果が半減した可能性もあるそうです。同上。

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