12. 3月 2014 · (176) 「音楽の悪魔」in《死の舞踏》 はコメントを受け付けていません。 · Categories: 聖フィル♥コラム · Tags: , ,

あとひと月あまりに迫った第10回記念定期演奏会は、オール・フランス・プログラム。19世紀後半に作られた3人の作曲家による4曲を演奏します。聖フィルがフランス人の作品を取り上げるのは、これが初めて。今回は、サン=サーンスの交響詩《死の舞踏》について書きます。

毎年、ハロウィーンの日の真夜中に死神が現れ、墓から死者(→骸骨)たちを呼び出してダンスを踊らせるという言い伝えに基づく音楽。もとは、フランスの医師・象徴派の詩人アンリ・カザリス(1840〜1909)の詩を歌詞とした、ピアノ伴奏付き歌曲でした。2年後の1874年、交響詩(正確には音詩)に改訂。夜中の12時の鐘をあらわすハープ、レクイエム(死者のためのミサ曲)で用いられるグレゴリオ聖歌(セクエンツィアという種類)の一部「ディエス・イレ(怒りの日)」の引用(長調に変えられているので、それらしくありませんが)、骨が擦れる音をあらわすシロフォンなど、描写的。踊りの興奮が高まりますが、雄鶏が夜明けを告げると(フランスの鶏の鳴き方、コケコッコーとは微妙に異なります。オーボエに注意!)、みな、あわてて墓に戻っていきます。

死神が弾くフィドルをあらわす独奏ヴァイオリンの不協和音は、ラとミ♭。この減5度(=増4度)音程は、3つの全音から成る「音楽における悪魔 diabolus in musica」でしたね((122)「音楽の悪魔」in《白鳥の湖》参照」。横の動き(旋律)としても縦の響き(和声)としても、古くから使用が避けられてきた音程です。死神をあらわすのにぴったり。

《死の舞踏》ではこの「音楽の悪魔」の音程にスコルダトゥーラが使われることをご存知の方も多いと思います。(楽器の)調子を狂わすという意味のイタリア語 scordare に由来するスコルダトゥーラは、弦楽器を通常と違う音に調弦すること。バロック時代によく使われました。ハインリヒ・ビーバー(1644〜1704)の《ロザリオのソナタ》では、ヴァイオリン・ソナタ15曲と終曲パッサカリアの全16曲のうち、通常のソレラミのチューニングを使用するのは最初と最後の2曲のみ。他の14曲は、ソレラレとかソドソレとか、すべて異なった組み合わせでスコルダトゥーラされます。弾いていて頭が混乱するのは間違いなし。

《死の舞踏》では、1番細い弦(E線)を半音下げるスコルダトゥーラ(ソレラミ♭)。こうするとラとミ♭の減5度が、高い方の開放弦2つの重音で出せるのです。開放弦は、ヴィブラートを(基本的に)使えないなど、指で押さえて出す他の音とは異質の響き(しかも2本分)を作ります。この減5度と一緒に使われるもう1つの和音レとラも、開放弦2つの重音です。不協和音ではありませんが、真ん中の音を欠く空虚5度で、やはり落ち着きが悪い。これらの「普通じゃない」響きが、「普通じゃない」登場人(?!)物を効果的にあらわしています。

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