25. 12月 2013 · (165) 交響曲? 協奏曲? サンフォニー・コンセルタント はコメントを受け付けていません。 · Categories: 聖フィル♥コラム · Tags: , , , ,

日本語で協奏交響曲と訳されるサンフォニー・コンセルタントsymphonie concertante(仏)。18世紀後半から19世紀にかけてパリやマンハイムなどで流行した、「複数の独奏楽器をもつ交響曲と協奏曲の中間形態」です1。実際には交響曲というよりも協奏曲。ハイドンの、オーボエ・ファゴット・ヴァイオリン・チェロのための協奏交響曲は、ホーボーケンが交響曲第105番(Hob.I:105)に分類しましたが、現在は交響曲の中に含めません( (158) ハイドンの交響曲は106曲!参照)。

バロック時代のコンチェルト・グロッソ(合奏協奏曲。(59) クリスマスに聴きたい音楽 part 3で、コレッリの《クリスマス・コンチェルト》をご紹介しました)も、複数の独奏楽器を持つ協奏曲です。ただ、似ているのは形だけ。コンチェルト・グロッソではソロとトゥッティの対比が重視されましたが、サンフォニー・コンセルタントではソロ群が中心。カデンツァも付きます。

1767年5月に、出版譜に初めてサンフォニー・コンセルタントの名が使われて以来(実はこの曲、5重奏曲でしたが)、1830年頃までに570曲ほどが作られました(sinfonia concertante や concertante だけのタイトルを含む)2。半数は、フランス人、あるいはフランスで活動した作曲家によるものです。多作の筆頭は、半世紀以上をパリで過ごしたと言われるイタリア人カンビーニ(1746〜1825?)で、なんと82曲! 次いで、マンハイム楽派第2世代カール・シュターミツ(1745〜1801)の、30曲以上。

緩徐楽章を欠く2楽章構成と、通常の協奏曲と同じ急―緩―急の3楽章構成が、ほぼ1:1。緩徐楽章でも、アンダンテよりも遅いテンポ(アダージョなど)は全く使われていないそうです。速い方が、ソリストの妙技披露に向きますものね。耳に快いメロディーが次々と出て来るのは、セレナードやディヴェルティメントなど、当時の「軽い」ジャンルの音楽と似ています。短調の曲は全体のわずか0.5%。古典派時代は圧倒的に長調の曲が多いのですが、交響曲の2.5%と較べても、短調の少なさが際立っています。

独奏楽器の数は、2、3から時に8、9まで。ソロ楽器の組み合わせも様々で、鍵盤楽器の4手連弾(テオドール・フォン・シャハト作)、ハープシコード・ヴァイオリン・ピアノ(ジャン=フランソワ・タプレ)、ピアノ・マンドリン・トランペット・コントラバス(レオポルト・コジェルフ)、2ヴァイオリン・2ヴィオラ・2オーボエ・2ホルン・1チェロ(ヨハン・クリスティアン・バッハ)など、響きが想像しにくいユニークなものも。

モーツァルトは、1778年にパリで作ったフルート・オーボエ・ホルン・ファゴットのための K. Anh.9 (297B)(消失。19世紀半ばに見つかった楽譜は、真作かどうかわかりません)と、翌年のヴァイオリンとヴィオラのための K.364 (320d) を、サンフォニー・コンセルタントと呼びました。一方、同じ1778年にパリで作ったフルートとハープのための K.299(297c) は、複数の独奏楽器を持つのに、ただの(!?)協奏曲。その理由は?

サンフォニー・コンセルタントは本来、独奏楽器の名演奏家(ヴィルトゥオーゾ)たちのための、公開演奏会用の作品でした。チケットを購入すれば、一般市民も楽しめる公開演奏会。複数のソリストの妙技を同時に楽しむことができるサンフォニー・コンセルタントは、メイン・プログラムにうってつけ。モーツァルトは、アマチュアのフルート奏者ド・ギーヌ公爵が娘と一緒にサロンで演奏するために注文した曲と、パリの名高い公開演奏会コンセール・スピリテュエル用の曲とを、はっきりと区別していたのです。

  1. 西原稔「サンフォニー・コンセルタント」『音楽大事典2』、平凡社、1982、1001ページ。
  2. Brook, Barry / Gribenski, Jean, “Symphonie concertante,” New Grove Dictionary of Music, 2nd ed., vol. 24. Macmillan, 2001, 807.

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