20. 11月 2013 · (160) 宝塚とバイロイト はコメントを受け付けていません。 · Categories: 聖フィル♥コラム · Tags:

先日、念願かなって宝塚歌劇を見て来ました。今年度の聖光学院中学・高校(横浜)の藝術鑑賞会が、東京宝塚歌劇の鑑賞。余った席に保護者も入れてくれると言うので、希望したのです。素敵なお姉様方が繰り広げる歌やダンス。華やかなショーでは、学院名やらモットーやらアドリブで加えてくださって、生徒さんたちはもちろん保護者も大興奮! 男子校の貸切公演は初めてで心配したとのことでしたが(組長さんの終演後のご挨拶)、1階前方に座る高3生が「めっちゃ」うらやましいとか、これから毎年、宝塚(鑑賞)だといいのにとか、みんな大喜びでした。

宝塚って、バイロイトと共通点があるんですね。今年、生誕200年を迎えたリヒャルト・ヴァーグナーが、自作だけを上演するために建てたバイロイト祝祭劇場。欧米の歌劇場につきものの桟敷席や、華やかなシャンデリアなどはありません。1階席だけで、クッション無しの堅い木の椅子(居心地が良いと居眠りしてしまうから)。かなり特殊な劇場です。共通していると思ったのは、オーケストラ・ピット。

宝塚劇場では、2階席からオペラグラスでオーケストラ・ピットばかり(舞台そっちのけで)覗き込んでいた私。休憩時間に、近くに行ってみました。舞台両脇から弧の形に伸びたエプロンステージ(銀橋と呼ぶそうです。巾120cm)が客席とピットを隔てています。横から確認できないのですが、ピットの客席側が銀橋の下に入り込んでいるようでした。

バイロイトのオーケストラ・ピットも、舞台の下に潜り込んでいます(反対側ですが)。しかも、客席に近い方に蓋をかぶせています(図1左参照。クリックで拡大します。図の右側の高い方が客席)。蓋とステージの間の「神秘の裂け目」から音は立ち上ってきますが、観客からは演奏者・指揮者の姿はもちろん、指揮棒の先も見えません。観客の気を舞台からそらすものを、徹底的に排除してあるのです。図1右は、ピット内の楽器配置。上が客席側(階段の高い方)で、弦は16、16、12、12、8のようです。ヴァイオリンのファーストとセカンドの位置が逆なのが、バイロイトの特徴1。中は相当狭そうですね(図2)。

配置図

図1左:バイロイト祝祭劇場オーケストラ・ピット断面図。右:楽器配置

図1:バイロイト祝祭劇場のオーケストラ・ピット

図2:指揮はジークフリート・ヴァーグナー

もともと、観客と同じ平面で演奏していた楽器奏者たち。舞台を見ていると多少視界に入るけれど、あえて気にしないものだったオーケストラを、ヴァーグナーはとうとう、完全に見えない存在にしてしまいました。音だけで十分。指揮者すら消してしまったのです。宝塚歌劇の楽器奏者も、1階席の観客からは見えません(たとえ見えたとしても、宝塚の観客の目に入らないはずですが)。バイロイトも宝塚も観客の注意を舞台だけに集中させ、舞台上の「別の」世界をより完璧にしているのです。

  1. 画像は両方とも Lexikus HP の Bibliothek から。