25. 9月 2013 · (152) 交響楽団 vs. 管弦楽団 はコメントを受け付けていません。 · Categories: 聖フィル♥コラム · Tags: , ,

オーケストラには、2種類の呼び方がありますね。聖フィル(聖光学院管弦楽団)のような管弦楽団と、N響のような交響楽団(わかりやすい例でしょう!?)。この交響楽団と管弦楽団の違いは規模の違い?という質問をいただきました。結論から言うと、構成や規模、役割の違いによる使い分けは特にありません。

交響楽団は symphony orchestra、管弦楽団は philharmonic orchestra の訳。シンフォニー・オーケストラは文字通り、交響曲を演奏するオーケストラという意味ですね。オーケストラだけですでに管弦楽(団)ですから、後者の「フィルハーモニック」部分は訳出されていません。

聖フィルのフィルであるフィルハーモニックとは何か? philo-(母音の前では phil-)は古代ギリシア語で「愛、愛すること」1。哲学 philosophy という言葉が「智 sophia」への「愛 philo-」に由来することはよく知られていますね。同じように philharmony は「ハーモニー(=調和)への愛」。調和といえば、もともとは神が創造した世界の秩序ハルモニア((63) 音楽は数学だった参照)でしたが、和声(ハーモニー)と考えると。

フィルハーモニーは音楽ヘの愛、音楽を愛する人という意味になります(フィルハーモニックはその形容詞形)。たとえば、1666年にプロの音楽家たちによって設立されたボローニャのアカデミア・フィラルモニカ(Accademia Filarmonica di Bologna)は、ボローニャ音楽愛好アカデミーということ。1770年には当時14歳のモーツァルトが試験を受け、入会を認められています。

プログラムの変遷のコラムで取り上げた、ロンドンのフィルハーモニック協会(Philharmonic Society of London)も同様。1813年にプロの音楽家によって、器楽の公開演奏会を促進するために作られました。《第九》やメンデルスゾーンの《イタリア》(1833)、サン=サーンスの《オルガン》(1886)などを委嘱。このような協会は各地にありましたが、ヨーロッパで最初に作られたのは、なんとロシアはペテルブルクのフィルハーモニー協会(1802)でした。1842年には、ニューヨークにも2

これらのフィルハーモニー協会は、宮廷ではなく主に市民階級によって運営され、自分たちが聴きたい曲を中心にした演奏会を主催していました。小規模な曲はサロンなどの私的コンサートで聴くことができましたから、協会コンサートの中心はオーケストラ曲。定期演奏会ではベートーヴェン(やモーツァルト、ハイドン)の交響曲が頻繁に演奏され、レパートリーの核として特別な地位を得ていく一因に((151) 生きてる? オケ演奏会のプログラム (2)参照)。シンフォニー・オーケストラは、このようにして交響曲が器楽曲の最重要ジャンルに就いた後に使われるようになった名称です。

というわけで、フィルハーモニック・オーケストラとシンフォニー・オーケストラは、敢えて言うなら歴史の違い。必ずしも前者が後者より古いわけではありません(各地のフィルハーモニー協会が、現在の◯◯フィルの母胎とは限らないので)3。でも、交響楽団は少なくとも、19世紀最後の1/3以降の創立のはず(もしも1860年代にできた交響楽団があったら教えてください)。ボストン交響楽団(1881)、シカゴ交響楽団(1891)のように、アメリカにシンフォニー・オーケストラが多いのもうなずけます。オーケストラが生まれてから100年そこそこの日本では、愛好家という意味などあまり気にしていないようですね。もちろん、交響楽団も交響曲だけを演奏するわけではありませんし、音楽を愛する者の集まりであることに変わりはありませんから。

  1. h は子音ですが、ラテン語ではほぼ発音されません。
  2. 会員たちが演奏を楽しむ会場がフィルハーモニーと呼ばれたり、そこを本拠とするオーケストラが「フィルハーモニック・オーケストラ」と呼ばれることもありました。
  3. たとえば、ロンドンの協会は創立100周年の1912年にロイヤル・フィルハーモニック協会と改称し、現在も活動を続けていますが、自前のオーケストラは持っていません。似た名前のオーケストラは、協会とは直接関係がありません。