29. 5月 2013 · (135) トリオはトリオじゃなかった? はコメントを受け付けていません。 · Categories: 聖フィル♥コラム · Tags: , , , , ,

ついこの前、トリオはトリオだった (133) と言っていたのに、今度は逆か、嘘つき!とお怒りの皆さま、すみません。あれは交響曲のトリオの話。第3楽章の中間部トリオのもとをたどると、3重奏で作曲されることも多かった、バロック時代の2つ目の舞曲(第2メヌエットなど)へ行き着きます。でも同じ頃、3重奏ではないトリオも存在していました。今回はそのお話。

バロック時代の最も重要な室内楽形式、トリオ・ソナタ。器楽の中でおそらく最も人気が高く、アマチュアを中心にヨーロッパ中で盛んに演奏されました。編成は、旋律楽器2つと低音楽器(譜例1参照)。イタリアでは17世紀後半から、旋律楽器として専らヴァイオリンが使われましたが、ドイツでは管楽器も好まれ、オーボエ、フルート、リコーダー、ファゴット、コルネットなどが用いられました。低音楽器は、チェロやヴィオラ・ダ・ガンバ、ヴィオローネ(コントラバスのご先祖様)などです。

譜例1:コレッリ作曲トリオ・ソナタ op. 1, no. 1, 第1楽章

譜例1:コレッリ作曲トリオ・ソナタ op. 1, no. 1, 第1楽章冒頭

トリオ・ソナタの音楽的な特徴は、3つの声部、特に2つの上声が音楽的にほぼ対等だったこと。現在のオーケストラ曲や室内楽曲では、ファースト・ヴァイオリンの方がセカンド・ヴァイオリンよりも音域が高いので、ファーストが旋律、セカンドが和声付けあるいは伴奏ということが多いですよね。トリオ・ソナタでも同様ですが、ときには1つのメロディーを2つの旋律楽器が代わる代わる弾いたり、途中でセカンドの音域がファーストより高くなって、メロディーを受け持ったりしました。

でもこれなら、トリオ・ソナタも3重奏でトリオ? いいえ、(132) 楽譜どおり演奏しても足りない場合をお読みの方は、低音声部の上に書かれた6や7などの数字にお気づきですよね。そうです。これは、和音の種類を示す数字。バロック時代の伴奏法、通奏低音です。通奏低音では、低音旋律楽器以外にハープシコードやオルガンのような鍵盤楽器が必要。左手で低音旋律を弾きながら、数字を読み解いて右手で和音を充填して行くのです。したがって、譜例1のトリオ・ソナタを演奏するには、奏者が4人必要1

トリオ・ソナタとは3重奏のソナタではなく、譜例1のように、独立した3つの声部から成るソナタという意味。奏者は4人と限りません。バッハのオルガン用トリオ・ソナタは、1人用(両手+足鍵盤で3声)。同じくバッハの、オブリガート・チェンバロ(両手の旋律が作曲された=即興で右手の和音を補う通奏低音ではないチェンバロ・パート)を伴う独奏楽器ソナタ(フルート用やヴァイオリン用など)は、2人用(独奏楽器1+チェンバロの両手で3声)。トリオが、3重奏つまり3つの楽器編成を意味するようになるのは、古典派以降です。

  1. (133) トリオはトリオだったで例に挙げた中で、リュリの《アルミード》とバッハの《ブランデンブルク協奏曲》第1番のトリオ部分は、3人で演奏する3重奏ですが、《ペルセ》のトリオ部分(第2パスピエ1回目と2回目)は通奏低音付き。4人で演奏します。