03. 4月 2013 · (127) ロマン派の協奏曲:なぜすぐソロが加わるか はコメントを受け付けていません。 · Categories: 聖フィル♥コラム · Tags: , , , ,

今回の定期で演奏するチャイコフスキーのピアノ協奏曲を、前々回の定演で取り上げたベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲と比べてみましょう。独奏楽器以外の相違点は? 最初に気づくのは、チャイコフスキーではホルンのイントロの後、5小節目からピアノが大活躍を始めることではないでしょうか。ベートーヴェンでは、ヴァイオリンが登場するまで延々待たされたのに。

協奏曲で使われるソナタ形式は、二重提示が特徴でしたね((73) 協奏曲のソナタ形式参照)。古典派を代表する作曲家ベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲は、ソロ楽器が加わる前にオーケストラだけで演奏される第1提示部と、ソリストも加わって演奏される第2提示部を持つ、この基本タイプ。

でもロマン派になると、チャイコフスキーのように「お待たせしない」タイプが増えます。メンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲やグリーグのピアノ協奏曲、以前、聖フィルで演奏したメンデルスゾーンのピアノ協奏曲やブルッフのヴァイオリン協奏曲も、独奏楽器がすぐに加わりました。この変化の理由は明らか。待ちきれないから。

前座(第1提示部)をなるべくコンパクトに作るにしても、2つの主題を提示してハイおしまいというわけにはいきません。主題は1回提示するより繰り返した方が印象に残るし(主題の「確保」と言います)、2つの主題をつなぐ「経過部」や提示部を締めくくる「コデッタ」も必要。これら、最低限のパーツを提示するだけでも、それなりの時間が必要です。

しかも、ほとんどのパーツは真打ち登場後の第2提示部で繰り返されます。ソロ楽器の魅力を示すための新しい旋律が加わり、今度は第2主題以降が新しい調で提示されるものの、主調が長調の場合は転調先も長調。コントラストはそれほどはっきりしません。さらに、これらの各パーツは再現部で再々登場するのです。同じようなことを何度も繰り返さなくても、真打ち登場の第2提示部からで十分、前座部分は端折ろう!と考えるのは、ごく自然な流れ。こうして、たくさんの「お待たせしない」協奏曲が作られました。

表1:主調が長調のときの協奏ソナタ形式(ソナタ形式との比較)(73) 表1再録

表1((73) 表1再録):主調が長調のときの協奏ソナタ形式(ソナタ形式との比較)

表1のように、第1提示部が省略されると、協奏(風)ソナタ形式は普通の(?!)ソナタ形式に逆戻り。チャイコフスキーのピアノ協奏曲は、交響曲と同じソナタ形式で作られています。もちろんロマン派の時代でも、ショパンのピアノ協奏曲や、聖フィルで取り上げたドヴォルジャークのチェロ協奏曲のように、第1提示部を持つ協奏(風)ソナタ形式で作られる場合もあります。

あれれ、古典派の協奏曲の中にもソロ楽器がすぐに加わるものがあるよと気づかれた方、鋭い! ベートーヴェンのピアノ協奏曲第4番はピアノ独奏で始まりますし、第5番(《皇帝》)も、オケの主和音の後、すぐにピアノの華やかなアルペジオ(分散和音)が入ります。モーツァルトにも、オーケストラとピアノの対話で始まる K. 271(《ジュノム》)がありますね。でも、これらは二重提示1。冒頭からソロが加わるものの、その後にオケだけの第1提示部が続きます。秩序やバランスが尊重された古典派時代には、反復も楽曲構成上の大事な要素でした。

  1. 2主題が2回ずつ提示されることを二重提示と言う場合もありますが、ここでは、オーケストラだけの第1提示部と独奏楽器が加わった第2提示部を持つことを二重提示として書いています。

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