25. 12月 2012 · (113) 愛の楽器? クラリネット (1) はコメントを受け付けていません。 · Categories: 聖フィル♥コラム · Tags: ,

ブラスバンドの花形で、クラシックはもちろんジャズなどにも使われるクラリネット。シングル・リード属を代表する吹奏楽器です。オーケストラの木管楽器の、高い方から3つ目。文字通りの意味は、Allegro → Allegretto のように、Clarino + etto で「小さなクラリーノ」((37) ヴィオラはえらい?註1参照)。えっ、クラリーノって何?

claro とか clario などは、「はっきりとした、よく通る、騒がしい、かん高い」などを意味するラテン語 clarus に由来する語1。フランス語では claron で、14世紀には clairin、clarin、clerain、clerin、clairon など、様々な形で使われました。トランペットとペアで言及されることが多かったということは、トランペットに似た楽器だったのでしょう。当時は様々なサイズや形のトランペットがあったので、よく通る、かん高い音を出す短いトランペットが clairin、clarin……と呼ばれたのではないかと考えられています。

16世紀のスペインでは、clarin が高音を出すトランペットだけではなく、通常のトランペットの高いパートを指す言葉としても使われたようです。17世紀半ば以降、ドイツでもトランペットのパートが、クラリーノ1、クラリーノ2などと書かれるようになりました。当時のトランペットはもちろんナチュラル・トランペット。ただの管ですから、自然倍音(図1)しか出せません。低音域はドミソだけ(ファンファーレを吹くくらいですね)。旋律を吹くなら、高音域を使う以外に方法はありませんでした。この高音域を受け持つのが clarin(o) パート、この高音域を演奏する高度な技術が「クラリーノ奏法」です。

armonico

図1:自然倍音列

トランペットの話が長くなってしまいましたが、クラリネットという名前は、つまり、音が明るいことに由来します2。クラリネットは、18世紀初めころ、ニュルンベルクの楽器製作者デンナーがシャリュモーから改良したことになっていますね。でも、詳しいことは不明。だいたい、シャリュモーという楽器がよくわからないのです。しばしば、シングル・リードの円筒管と説明されますが、17世紀には、シングル・リードのみならず、チャルメラのようなダブル・リードも含めた様々な管楽器がシャリュモーの名で呼ばれていました。もとの楽器がはっきりしないので、その改良もはっきりしません。

ただ、左手の親指で操作する「レジスター・キー(スピーカー・キー)」が、明るい音を作ります。発明者が誰かはわからないこのキーに触れながら、低音域(シャリュモー音域と呼ばれます)と同じ運指で吹くと、それぞれの音の12度上の音が出るのです。これがクラリーノ音域。太い低音域にくらべて、つややかではっきりした音色です。オクターヴではなく、オクターヴ+5度上の第3倍音が出ますから、幅広い音程の跳躍が得意。シャリュモー音域とクラリーノ音域の間の音は響きがあまり良くなく、クラリーノ音域よりも高い音域はやや鋭い音になりますが、この4種類の音色のコントラストがクラリネットの大きな魅力になっています。

  1. Dahlqvist & Tarr, “Clarino” New Grove Dictionary of Music, 2nd ed., vol. 5. Macmillan, 2001, p. 911.
  2. 瀬木悠「クラリネット」『音楽大事典2』平凡社、1982、791ページ。