12. 7月 2012 · (89) どこで弾いていたのか?:《第九》の初演 (2) はコメントを受け付けていません。 · Categories: 聖フィル♥コラム · Tags: , , ,

「もちろん、オーケストラはステージ前方でしょ? 奥に合唱団が並んで」とお思いの方が多いでしょうが、残念ながら違います。(26) クラシック音楽ファンの常識?で書いたように、音楽と言ったら声楽。器楽は1段(?)劣る脇役と考えられていました。ステージ上で演奏する(できる)のは、ソリスト(声楽でも器楽でも)と、歌の人。

オーケストラが演奏する場所は、いわゆる「オーケストラ」。古代ギリシアの劇場で舞踏場だった、ステージと客席の間のスペースですね((29) オーケストラは「踊り場」だった!?参照)。客席とは仕切りを隔てているだけです。図1は《第九》が初演された、ヴィーンのケルントナートーア劇場の「オーケストラ(踊り場」)。指揮者の位置は、現在と違って舞台のすぐ下。奏者は、客席に背を向けるようにして演奏していました。オーケストラだけの演奏会では、舞台には幕が下ろされていたそうです1

図1:ケルントナートーア劇場の「オーケストラ」

オーケストラがステージの上で演奏するようになるのは、19世紀半ば。ただ、上は上でも……。図2は、ヴィーンのコンセール・スピリチュエル(楽友協会と並ぶ、アマチュアの音楽団体)の楽器配置。舞台手前は独唱と合唱団の場所で、楽器奏者はその後です。相変わらず、声楽の方が器楽よりも偉かったというか、重用視されていたことがわかります。奥左側にヴァイオリンとヴィオラ(読み取れないのですが、最前列右端がコンサート・マスターのようです)、中央のオルガンの前に低弦、右側が管楽器(図2’をクリックで拡大してご覧ください)。打楽器が見当たらないのですが?

図2:ヴィーンのコンセール・スピリチュエルの楽器配置

図2’:ヴィーンのコンセール・スピリチュエルの楽器配置

図3は、1874年に行われたベートーヴェンの《ミサ・ソレムニス》の演奏会。《第九》初演の際に、ヴィーンでの部分初演が行われた曲です。手前に聴衆が座っています。黒い服を着た指揮者の左側に、独唱者が4人、右側にヴァイオリンの独奏者。左右両側に、合唱の女性たち。男性は、その後ろのようです。そして、ソリストたちの後ろ、舞台の中央にオーケストラの団員たち2。譜面台が置かれているので、区別できますね。最前列にヴァイオリンが見えます。ベートーヴェンの胸像が置かれた正面バルコニーの下にも、奏者が並んでいるようです。合唱、オーケストラとも大人数! 管楽器は倍管でしょうか((84) 倍管は珍しくなかった参照)。

図3:ベートーヴェン《ミサ・ソレムニス》の上演(1874)

そうそう、図2を見て、合唱の後ろでは楽器奏者は指揮が見えなかったのではとご心配の方へ。オケのメンバーも立って演奏していました。ご安心ください。

  1. 小宮正安『オーケストラの文明史』、春秋社、2011、115ページ。図2〜3も同書より。図2:103ページ、図3:109ページ(図版提供:ウィーン楽友協会資料室)。
  2. 前掲書109ページに「舞台の前方はあいかわらず声楽によって占められているが、彼らの中に独奏ヴァイオリンが唯一の器楽として姿を見せている」と書かれた説明は正確ですが、図2のような「器楽は後ろ半分」の配置ではなくなっているのが、大きな変化と言えるでしょう。

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