24. 5月 2012 · (82) 1000年前の楽譜、ネウマ譜 はコメントを受け付けていません。 · Categories: 聖フィル♥コラム · Tags: , , , ,

アマ・オケ奏者のための音楽史第6回は質問から。約1000年前の楽譜に存在しなかったものは?

  1. 小節線
  2. 音部記号(ト音記号など)
  3. 譜線(五線など)

    譜例1:ネウマ譜(イタリア、15世紀)

1000年前は11世紀、中世。クラシック音楽のルーツ、グレゴリオ聖歌が整えられていった時代です((65) グレゴリオ聖歌はいくつあるのか参照)。聖歌が、譜例1のような黒くて四角い「ネウマ」で書かれていたことをご存知の方もおられるでしょう。譜線は4本。聖書の言葉をぼそぼそ唱えているよりも、節をつけて歌った方が神様にも喜ばれるだろうと生まれたグレゴリオ聖歌ですから、歌と言っても音域が狭いのです。4線譜で十分でした。現代でも、グレゴリオ聖歌集はネウマで記されます。

音部記号もありますね。譜例1(クリックで拡大します)の中のAは、ヘ音記号。現在と同様、右側の2つの点に挟まれた線がファですから、右隣のネウマはラ。主の降誕のシーンが細密画で描かれた、大きなPのイニシャルの右側には、現在、ヴィオラの記譜に使われるハ音記号のCが書かれています(B)。Cに挟まれた線がドですから、白い楕円が重なった右隣のネウマはレ(ヘ音記号もハ音記号も、4線のどれにでも付けられます。聖歌の歌い手は男性だったので、ト音記号はありませんでした)。ということは、上の3つのうちで1000年前に存在しなかったのは、小節線だけ?

この黒く四角いネウマは、13世紀ころから一般的になった新しいタイプ。それ以前は、地域によってネウマの形や書き方が異なっていました。譜例2は、1030年頃に南フランスで作られたネウマ譜(聖パウロの日のための聖歌)。ラテン語の祈りの言葉(=歌詞)が小さく書かれた上の、茶色っぽい点々がネウマです。小節線はもちろん、音部記号もありません。だいたい、音部記号を書くにも線が無いし……。

譜例2:ネウマ譜(アクィタニア式記譜法、1030年頃)

あれれ、歌詞と歌詞の間に白っぽい線が見えます(拡大して見てください)。これが、ファを表す譜線。先が尖ったもので、羊皮紙を傷つけてあるのです。よく見ると、まるでこの線の上下に等間隔に線が引かれているかのように、音符の高さが揃っています。これなら、歌うことができますね。というわけで、1000年前の楽譜に存在しなかったのは、小節線と音部記号。もちろん、さらに古い時代には、譜線もありませんでした(譜例3参照)1

私たちが日頃お世話になっている楽譜は、数えきれないほどあるグレゴリオ聖歌の覚え書きとして始まりました。聖歌の歌詞の上に、旋律線を示すような簡単な印(ネウマ)を記し、メロディーを思い出せるようにしたのです。11世紀初めに、譜例2のようにファの譜線が刻まれるようになり、その後、ファの線が赤インクで書かれる→色違いのドの線が加わる→音部記号の導入と進み、正確な音高表記が可能に。四線譜の発明は、グイード・ダレッツィオ((78) ドレミの元参照)に帰せられています。小節線が加わるのは、まだまだ先です。

譜例3:ネウマ譜(ザンクト・ガレン式記譜法、950〜975年)

  1. 譜例1と3に書かれた聖歌は、両方とも、降誕祭のためのアンティフォナ《Puer natus est nobis 我らに幼な子が生まれ給えり》です。

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