14. 3月 2012 · (72) 第2主題は「ようこそ」の気持ちで はコメントを受け付けていません。 · Categories: 聖フィル♥コラム · Tags: , , ,

ソナタ形式ってなんだか偉そうに聞こえますが、(66) 再現部は「ただいま」の気持ちでで書いたように、実はとてもシンプル。提示部・展開部・再現部の3部分構成です。序奏部が付いても良いし、ベートーヴェン以降は最後にコーダが加わって4部分に。大切なのは、調のコントラストでしたね。始まりの調(主調)から5度上(あるいは3度上)の調に転調し、主調に戻って終わります。

ソナタ形式の考え方シリーズ②は、主題について。通常、第1主題と第2主題の2つが使われます。提示部は2主題が提示される部分、再現部は2主題が再現される部分です。主題と調の関係を、表1にあげます。

図1:ソナタ形式

表1:ソナタ形式

もともと、ソナタ形式で重要なのは調のコントラストでしたから、主題は1つでも構いませんでした。でも、転調した先で新しい旋律が出ると、冒頭とのコントラストが際立ち、弾く楽しみや聴く楽しみが増えます。その新しさを強調するため、第2主題は多くの場合、冒頭の第1主題と対照的に作られました。

たとえば、強弱(フォルテ ⇔ ピアノ)、音型(細かく忙しく ⇔ ゆったりと)、表情(堂々と ⇔ やさしく)、アーティキュレーション(スタッカートでするどく ⇔ スラーでレガートに)、楽器編成(オーケストラ全体 ⇔ ソロや1種類の楽器)、音域などを変えられますね。前回、提示部を「よろしくお願いします!」と書いたのは、第1主題はたいてい、オーケストラ全体がフォルテで弾くように指定されているため。一方、第2主題は、少数の楽器が受け持つことが多いので、それ以外の人は「ようこそ」と迎えてあげてください1

展開部を経て再現部。提示部と異なり、ここでは第1主題だけではなく第2主題も、主調で再現されます2。ソナタ形式の基本はこれだけ。弾きながら以下の4つを意識できれば、あなたはもう、ソナタ形式のエキスパート!

      • 提示部第1主題:「よろしく」
      • 提示部第2主題:「ようこそ」(転調しているので、臨時記号付き)
      • 再現部第1主題:「ただいま」
      • 再現部第2主題:「ようこそ」(今度は主調)

古典派の器楽曲の第1楽章は、ほとんどこのパターン。ソナタ形式を覚えると、交響曲やソナタを聴いたり弾いたりするのが、とても楽に、また楽しくなります。この先どうなるのか、だいたい予想できるからです。第1主題が主調で戻って来たら、「ただいま」「おかえり」の再現部。折り返し地点を過ぎ、終点が見えて来ます。作曲家たちが作りやすいパターンは、奏者や聴衆にもわかりやすいパターンなのです。

さらに、この基本パターンを覚えると、それからはずれた部分にも気づくようになります。たとえば、今回取り上げるベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲。譜例1を見ると、2つの主題は、どちらも二分音符と四分音符を中心に、上がって降りるラインを描いています。しかも、どちらも最初は、フルート以外の木管によって弱音でなめらかに提示されます。つまり、どちらも「ようこそ」的で、主題間のコントラストはあまり感じられません。ベートーヴェンは、当時の人々が期待したソナタ形式の基本パターンを、微妙に避けていますね。次回は、この協奏曲のソナタ形式について、もう少し詳しく見てみましょう。

譜例1:ベートーヴェン作曲ヴァイオリン協奏曲第1楽章の2つの主題(主調部分、冒頭4小節)

  1. 以前は、第1主題が「男性的」、第2主題は「女性的」と形容されることが多かったのですが、最近はあまり言わなくなりました。
  2. 再現部の第2主題が主調で再現されない形(表1中の*)については、改めて書きます。