03. 2月 2012 · (66) 再現部は「ただいま」の気持ちで はコメントを受け付けていません。 · Categories: 聖フィル♥コラム · Tags: , , , ,

交響曲や室内楽曲、ピアノ・ソナタなどの第1楽章のほとんどは、ソナタ形式で作られています。この定型をご存知ですか。どんなことを考えながら、ソナタ形式の曲を弾いていますか。今回は、ソナタ形式の考え方シリーズの①です。

歌詞に合わせて作曲する声楽曲や、器楽でも小品の場合とは異なり、交響曲のような規模の曲を、音だけで構成するのは難しいですよね。しかも、コンサートの開幕音楽だった頃の「交響曲」は、ほぼ使い捨て((16) 交響曲は開幕ベル参照)。コンサートをたくさん開くには、交響曲がたくさん必要でした。必要に迫られた作曲家たちによる多くのプロセスを経て、経済的で作りやすく聴き映えがするパターンが完成したのです。それを1830年ころ(ベートーヴェンの死後)にソナタ形式と初めて呼んだのは、ドイツの音楽学者 A・B・マルクスと考えられています。

ソナタ形式:(序奏部) 提示部 ― 展開部 ― 再現部 (コーダ)

ソナタ形式は3部分から成ります。ハイドンのころの交響曲は、提示部の前にテンポの遅い序奏部がつくことが多く、展開部が短いのが特徴。18世紀の末ころから、再現部の後にしばしばつくようになったコーダを、ベートーヴェンは第2の展開部として充実させました。《運命》交響曲第1楽章の提示部、展開部、再現部、コーダがそれぞれ124、123、126、129小節で、1:1:1:1の割合なのは良く知られていますね。19世紀には、むしろこの4部分構成が一般的です。

ソナタ形式で大切なのは、調の変化。最初の調(主調と言います)から途中で転調し、また主調に戻って主調で終わるという調のコントラストです。転調するのは提示部の途中。転調先は:

  • 主調が長調の場合 → 5度上の調(たとえば主調がニ長調の場合はイ長調)
  • 主調が短調の場合 → 3度上の調(たとえば主調がニ調の場合はヘ調)

他の調から主調に戻るところが、再現部。この再現部をより印象的にしているのは、調だけではなく、提示部冒頭の主題も再現されること。提示部を繰り返す習慣がかなり後まで残ったのは、大事な冒頭主題を聴く人にしっかり確認してもらうためでしょう(再現に気づいてもらえなかったら悲しいですから)1

というわけで提案。交響曲の第1楽章を以下のように感じながら弾いたらいかがでしょうか。

  1. 最も重要な提示部の冒頭主題:                            しっかりと大事に「よろしくお願いします!」の気持ちで。
  2. 中間の転調部分(楽譜に臨時記号が多くなる):                    旅を楽しみつつ、故郷(主調)も懐かしむ気持ちで。
  3. 冒頭主題が主調で戻って来る再現部:                         旅を終えて「ただいま!」の気持ちで。

特に、3番目の再現部「ただいま!」が大切。聴いている場合は「おかえり!」ですね。全く同じでは芸が無いので、作曲家はほとんどの場合、再現部を提示部と何かしら変えています(強弱、音域や楽器編成の変化、対旋律の追加など)。また、冒頭主題を主調以外の調で出す、偽の再現にもご用心。再現部で「ただいま!」「おかえり!」と感じる習慣をつけると、交響曲に限らず室内楽曲やソナタなど、ソナタ形式の曲を弾いたり聴いたりすることが、いっそう楽しくなりますよ。

  1. 初期の交響曲(ハイドンやモーツァルトなど)で、提示部だけでなく後半も繰り返すのは、ソナタ形式の元になった古い形のなごりです。

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