20. 12月 2011 · (60) クリスマスに聴きたい音楽 part 4 はコメントを受け付けていません。 · Categories: 聖フィル♥コラム · Tags: , , ,

昨年のミサ曲《今日キリストが生まれたまえり Missa Hodie Christus natus est》に続き、主の降誕を祝うカトリックの典礼音楽をご紹介しましょう。今年、没後400年を迎えたトマス・ルイス・デ・ビクトリア(1548〜1611)のモテット《おお、大いなる神秘 O magnum mysterium》です。

ビクトリアはスペイン生まれ。生地アヴィラの大聖堂少年聖歌隊員として活動したあと、奨学金を得てローマに留学。イエズス会のコレギウム・ゲルマニクムで学びました。1571年に卒業した後は同校で教え、73年にはマエストロ・デ・カッペッラ(直訳すると礼拝堂長)に選ばれています。私がペンネームに名前をお借りしているパレストリーナは、当時ローマ市内のセミナリオ・ロマーノのマエストロ・デ・カッペッラでした。ビクトリアがこの20数歳年上の巨匠と知り合いだったのはほぼ確実で、実際に作曲を教わった可能性もあります。司祭の資格を得て、おそらく85年にスペインに帰国。皇太后マリアに仕えました。

パレストリーナと並び称されるルネサンスの作曲家ビクトリアですが、イタリア語のマドリガーレやフランス語のシャンソンなど、世俗曲もたくさん作曲した前者とは異なり、生涯、ミサ曲やモテット、《聖週間聖務日課集》など、ラテン語の歌詞を持つ宗教曲しか作りませんでした。

《おお、大いなる神秘よ》は、1572年にヴェネツィアで出版された、ビクトリアの最初の曲集におさめられています。クリスマスの朝課で歌われる、同名のグレゴリオ聖歌(より正確には、レスポンソリウム=応唱という種類)にもとづく、4声の無伴奏声楽曲。同じ旋律を歌いながら1声ずつ対位法的に加わっていくのは、この時代の典型的なオープニングですが、「おお祝福された乙女よ(O beata virgo)」では全声が同じリズムで歌い、歌詞が強調されます。最後のハレルヤ(Alleluia)では一時的に3分割のリズムを用いて、コントラストをつけていますね。

コンパクトで、この後のバロック時代に成立する長短調に近い響きも感じさせるこの《おお、大いなる神秘よ》は、日本でも盛んに歌われています。静謐な雰囲気をお楽しみください。

おお大いなる神秘よ
そして驚くべき秘跡よ
動物たちが見たとは、生まれたばかりの主が
まぐさ桶の中に横たわっているのを。
おお祝福された乙女よ、その胎は値したのだ
主イエスキリストをみごもることに、
ハレルヤ(細川哲士訳)

 

ビクトリアはさらに、このモテットを用いて同名のミサ曲も作っています。ミサ曲《おお、大いなる神秘よ》のキリエは、こちらから試聴できます。

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