昨年のヘンデルの《メサイア》とパレストリーナのミサ曲《今日キリストが生まれたまえり》に引き続き、今回はアルカンジェロ・コレッリ(1653〜1713)の《クリスマス・コンチェルト》をご紹介しましょう。1814年にアムステルダムで出版されたop. 6には、12曲のコンチェルト・グロッソが納められていますが、「降誕の夜のために作曲された」という但し書き付きの第8番がそれ。

バロック時代には、このような器楽合奏曲が教会の礼拝で演奏されることも多かったのですが、中でもこの曲は、12月25日の夜(キリスト教の暦では前日の日没から1日が始まるので、実際には24日の夜から25日にかけて)の礼拝用に作られたというわけです。

終楽章後半のテンポが緩やかになった部分に、パストラーレ・アド・リビトゥムと書かれています(このアド・リビトゥムが何を意味するのか、何が自由なのかははっきりわかりません)1。パストラーレとは牧歌的な曲を指しますが、降誕→羊飼いたち→草原牧場→牧歌的という連想でしょうか。御使いによって降誕を告げられた羊飼いたちが、馬小屋で生まれ飼い葉桶に寝かされたイエスを訪れるというシーン(ルカ 2.8〜)は、たしかに牧歌的ですよね。12/8拍子や6/8拍子などの、四分音符と八分音符の交代によるターンタターンタのシチリアーノ・リズムがお約束。バグパイプ特有のドローン(持続低音)に支えられて、静かでのんびりとした雰囲気が描かれます2

同時代の人々から「ヴァイオリンの大天使(Archangelo はイタリア語で大天使の意味)」と賞賛されたコレッリ。彼の作品のヴァイオリン・パートは、ほとんどが第3ポジションまでで弾け、重音もごくわずか。派手さはありませんが、わかりやすい和音進行が耳に心地よく、テンポや音量の対比と調和のさじ加減が絶妙です。ヴィヴァルディよりも25歳、J. S. バッハよりも32歳年上のコレッリは、ローマの富裕な貴族をパトロンに持ち、生活のために作曲&出版する必要がありませんでした。12曲ずつまとめられた作品集6つに納められたソナタや協奏曲は、厳選し推敲を重ねた自信作と考えられます3

コレッリのクリスマス・コンチェルトのドラマティックな冒頭部分と、急くようなト短調部分に、暖かい日差しが差し込んだような厳かなト長調ラルゴのパストラールが続く終楽章は、こちらから試聴できます。みなさんがこれまで聴いたり弾いたりした演奏とこれらとの違いについては、また改めて書きます。

  1. 現在では、クリスマス以外の季節にはこの部分を自由に省略できるという解釈が一般的です。パストラーレがクリスマス・コンチェルトの終楽章とは限りません。たとえばマンフレディーニ(1684〜1762)の作品 op. 3, no. 12 では、第1楽章にパストラールが置かれています。
  2. クリスマス・コンチェルトのパストラーレに関して、「キリスト降誕の際に羊飼いたちが笛を吹いたという聖書の記述にちなむ」という説明をしばしば目にします。しかし、聖書の引用部分を記したものを見たことがありませんし、4つの福音書にそのような記述は見当たりません(ご存知の方、教えてください)。
  3. クリスマス・コンチェルトが含まれるop. 6は死後出版ですが、生前、本人がまとめました。