14. 9月 2011 · (46) 神の楽器? トロンボーン part 3 はコメントを受け付けていません。 · Categories: 聖フィル♥コラム · Tags: , , , ,

part 1part 2 に続き、「トロンボーンは神聖な楽器なので、19世紀にベートーヴェンが導入するまで、交響曲に用いられなかった」が◯か×か、考えてみましょう。確かに、ハイドンの106の交響曲にも、モーツァルトの約50の交響曲((14) モーツァルトが作った交響曲はいくつ?参照)にも、古くから教会で使われた神聖なトロンボーンは含まれません。

ベートーヴェンは、交響曲第5番《運命》の終楽章に、ピッコロ、コントラファゴットとともに3本のトロンボーンを導入しました((13) 掟破りのベートーヴェンに、このオーケストレーション拡大も追加してください)。彼は「ティンパニは3つも使いませんが、これらの楽器を加えることでティンパニ6つよりも大きな響きと、良い響きが得られるのです」と書いています1。この《運命》をきっかけに、19世紀の交響曲でトロンボーン等が頻繁に使われるようになりました。ただし、

(《運命》は)ピッコロやコントラファゴット、そしてとくにトロンボーンをはじめて使用した交響曲である、といういまだに流布している誤解は訂正しておかなければならない。(中略)これらの楽器は個々には交響曲でもすでにかなりの使用例があるので、楽器自体は決して新機軸なのではない2

というわけで、史上初ではありません。3つ目の答えも×です。ベートーヴェンはこの他に、第6番《田園》の4、5楽章と第9番《合唱》の2、4楽章にも、トロンボーンを導入しました。「本当は使わない伝統だけれど、響きのためにどうしてもここだけ」という意図が伝わりますね。

さて、ベートーヴェンよりもずっと大胆に、交響曲にトロンボーンを使ったのは誰でしょう? シューベルトです。第5回定演で取り上げる《未完成》では、第1楽章にも第2楽章にも第3楽章にも使っています3。1821年頃に試みた旧番号第7番のホ長調交響曲で、彼はすでに、トロンボーンを第1楽章から使いました4

ベートーヴェンが《第九》の作曲に着手するより前から、交響曲で躊躇せずに(?)トロンボーンを使ったシューベルト。 1839年にライプツィヒで《グレート》が演奏されたときは、第1楽章の序奏から活躍する3本のトロンボーンが、インパクトを与えたと考えられます。交響曲におけるトロンボーン普及に果たしたシューベルトの役割は、もっと評価されるべきでしょう。

余談ですが、まだトロンボーン奏者がいない聖フィルには、毎回同じ若い3人組が賛助に来てくださっています。前回までは、最後の曲の最後の楽章だけの出番で(第3回のブラ1と第4回《運命》)、ずーっと座っているだけのトロンボーンさんたちが気になった、という笑い話も聞きました。しかし! 今回は全曲全楽章で演奏。《フィンランディア》《ドボコン》には、チューバの賛助さんも加わります。重低音に支えられた、聖フィル初の19 & 20世紀プログラムを、どうぞお楽しみに。

  1. オッペルスドルフ伯爵宛、1808年3月頃の手紙。平野昭『ベートーヴェン事典』(東京書籍、1999)、61ページ。
  2. 土田英三郎『ベートーヴェン全集3』(講談社、1997)、曲目解説43ページ。
  3. 第3楽章の最初のページだけ、自筆スコアが残されています。
  4. 第1楽章の途中まで、スコアが完成されています((33) シューベルトの未完成交響曲たち参照)。

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