22. 6月 2011 · (34) ドイチュ番号について はコメントを受け付けていません。 · Categories: 聖フィル♥コラム · Tags: , , , , , ,

前回のシューベルトの未完成交響曲たち を読んで、混乱しているナンバリングだけではなく、ドイッチュ番号とやらも省いてシンプルにしちゃったら?とか、ラテン語で「作品」を意味する opus(オープス、英語読みではオーパス、複数形は opera)の略の op. なら知っているけれど、Dって何?と考えた方、いませんでしたか? たしかにアマ・オケの普通のレパートリーなら、「シューベルト:交響曲ロ短調《未完成》」方式で、曲を区別できます1。でも、不可能な場合もあるのです。

たとえばヴィヴァルディの「ヴァイオリン協奏曲ニ長調」は、現存するものだけでも30曲以上。作曲家本人がつけた番号……なんて、ありゃしません。ジャンル別番号は、大作曲家の中ではベートーヴェンが《エロイカ》出版の際、交響曲だけの通し番号である第3番と記したのが最初(彼にとって、交響曲というジャンルが特別なものであったことの現れですね)2。ヴィヴァルディの約100年後の話です。

これらのニ長調協奏曲の中には、op. 3, no. 9 という番号をもつ曲もあります。これは、1711年に出版された、ヴァイオリン協奏曲集作品3『調和の霊感』の9曲目ということです3。17、18世紀にソナタなどの器楽曲を6曲、あるいは12曲まとめて出版する際には、op. 1 のような作品番号がつけられました。

ただ、出版社が番号をつけることが多かったため、同じ曲なのに出版社によって異なる番号がつけられたり、違う曲に同じ番号がつけられるような混乱も生じました。出版されなかった曲(こちらの方が大多数です)には、当然ながら番号がありません。ベートーヴェン以降の作曲家が自作に番号をつけるようになってからも、出版順にすることが多く、作曲の順序が反映されないことと、全ての作品が網羅されないという問題点は、変わりませんでした。

話をシューベルトに戻しましょう。彼が短い生涯で作った1,000近い曲を研究して作曲年代順に並べ、ドイッチュ番号(D)を与えた主題総目録(1951)を作ってくれたのが、オーストリアの音楽学者ドイッチュ。「全作品」を「一定の規則に従って」並べたというのがポイントです。シューベルトの場合、ピアノのための4つの即興曲op. 90や《魔王》op. 1のような、出版されて作品番号を持つ曲はごくごくわずかです(しかも、作曲年代と作品番号は一致しません)から、特定の曲を探したりある曲を同定するときに、D番号は欠かせません。また、数字から、だいたいの作曲時期を類推することもできます。膨大なデータを手作業で整理してくれたドイッチュさんに感謝! 演奏会のチラシやプログラムなどには、正式名称の一部としてD番号もお忘れなく。

このような番号は、作品番号ではなく作品目録番号と呼ばれます。表1に、主な作品目録番号の略号をまとめました4

[表1 主な作品目録番号の略号]
作曲家 略号 編纂者 番号のつけ方
ヴィヴァルディ RV リオム ジャンル別、調性順、通し番号
J. S. バッハ BWV シュミーダー ジャンル別、通し番号(宗教→世俗)
ヘンデル HWV バーゼルト ジャンル別、通し番号(舞台→声楽→器楽)
ハイドン Hob. ホーボーケン ジャンル別、それぞれ1から
モーツァルト K. またはKV ケッヘル 年代順、通し番号(K6版まで改訂)
シューベルト D ドイッチュ 年代順、通し番号
リスト S. サール ジャンル別、通し番号(舞台→声楽→器楽)
  1. 実は聖フィルでも、「誰も作品番号で識別しないから必要無し」と、第2回定演までのチラシやプログラムの曲目表記は、この方式でした。在京のプロ・オケの中にも、この方式を採用しているところがあります。
  2. 石多正男『交響曲の生涯』東京書籍、2006年、276ページ。
  3.  J. S. バッハは、後にこの曲をチェンバロ協奏曲(という名のチェンバロ独奏曲。BWV 972)に編曲しながら、最新のイタリア音楽書法を学びました。(26) クラシック音楽ファンの常識 ? 参照
  4. ベートーヴェンの作品整理には、op. 以外に2種類の略号が使われます。本人が op.番号を付けなかった曲に、キンスキーとハルムがつけた、WoO(Werk ohne Opuszahl 作品番号無しの作品)番号と、op. も WoO も持たない作品や断片・スケッチなどに、ヘスがつけた Hess 番号です。また、ドヴォルジャークの作品はブルクハウゼルによるB.番号(年代順、通し番号)で整理されていて、チェロ協奏曲 op. 104 は B. 191 だそうですが、まだ使われているのを見たことがありません。

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