プロでもアマでもオーケストラ演奏会と言えば、1曲目に短い曲、2曲目にやや長い曲、休憩をはさんでメインの交響曲という構成が定番ですよね。最後の交響曲は最も長く、エスブリッコさんが前回のコラム「交響曲の成長期」コメントに書かれたように、緩徐楽章でついウトウトということも。でも、初期の交響曲(このコラムでは「交響曲」と表記)であるシンフォニーアは、このような現在のイメージから全くかけ離れたものだったのです。

18世紀における交響曲=シンフォニーアは、序曲でした。序曲と聞くとオペラの序曲が頭に浮かびますが、オペラ以外にも教会の礼拝音楽や演奏会の開幕を告げるために、シンフォニーアが演奏されました。シンフォニーアは、オペラや礼拝、演奏会など、普段の生活とは異なる「非日常」の世界の始まりを告げる役目を果たしていたのです。オペラや演奏会が始まりますよ、上司の小言や息子のぱっとしない成績など忘れて(!?)、英雄譚や三角関係のもつれにはらはらどきどきする、あるいは超絶技巧に目を見張る、そんな特別な時間を過ごしましょう!というわけです1

モーツァルトがオペラ序曲を交響曲に転用したのは、この2つが共通の役割を持っていたからですね。また、演奏会の最後にもシンフォニーアが演奏されることがありましたが、それは現在のようなメインの曲ではなく、「非日常」の時間が過ぎ去り、日常生活が戻ってくることを告げるものでした。

1720〜1810年に16,558曲ものシンフォニーアがあったのは、オペラや礼拝や演奏会の開始音楽が、それだけたくさん必要だったからです。同じ「交響曲」を何度も使えませんでしたから。開幕ベル代わりですから、1曲30分なんてとんでもない! 1曲10分程度2。CD1枚に6曲でぴったりです。

しかも、その10分程の「交響曲」、極めるどころか別に聴かなくてもよかったらしいですよ…。この続きは次回のコラムをお楽しみに。

  1. 前回第3回定期で《オーリドのイフィジェニー》序曲を取り上げたグルックは、オペラ改革者としてヴァーグナーに高く評価されました。その主唱のひとつが、序曲において、オペラ本体で使われる音楽や雰囲気を先取りするというオペラ序曲の改革です。この手法は、現代の私たちには当然のことですが、「非日常」の始まりを告げるだけの序曲なら、オペラ本体と音楽的に関連付ける必要はありませんでした。
  2. 前回のコラムで紹介したJ. C. バッハのシンフォニーア 18-4、遅めの演奏で10分37秒かかっていますが、これは1楽章ではなく3楽章全体の時間です。