このタイトルを不思議に思われた方、多いでしょうね。ベートーヴェンの交響曲は9曲、モーツァルトは41曲に決まっているじゃないか!と。実は、モーツァルトが作った交響曲は、41曲ではないのです。

モーツァルトが最後に作った交響曲は、確かに41番と呼ばれています。ただこれは、19世紀に編纂された旧モーツァルト全集での総数です。その後モーツァルト研究はどんどん進み、交響曲に関しても多くのことが判明しました。

41曲の中には、モーツァルト以外の作品が4曲含まれていました。たとえば37番は、ミヒャエル・ハイドン(1737〜1806、ヨーゼフ・ハイドンの弟)の交響曲に、モーツァルトが序奏を加えたものでした。一方、新たなモーツァルトの真作も2曲見つかりました1。41−4+2で、モーツァルトが最初から交響曲として作曲したのは、計39曲。これに、後から交響曲に編曲した曲の数を加えると総数になりますが、どこまで含めるかが問題です。

交響曲というジャンルが、まだ成長過程にあったこの時代。モーツァルトにとって、交響曲とセレナードやオペラ序曲の間には、それほど大きな違いは無かったと考えられます。多楽章から成るセレナードからいくつかの楽章を取り除いたり、序曲に楽章を付け加えたりして、交響曲に改作していたからです2。クリストファー・ホグウッドはこれを根拠に、セレナードやオペラ序曲からの編曲など、約70曲を収めた交響曲全曲録音を1980年代初めに出して、話題になりました3

ただ、これは極端な例です。吉成順氏は『モーツァルト事典』(東京書籍、1991)の中で、47曲をリスト・アップしています。海老沢敏&エリック・スミス監修の『小学館モーツァルト全集』(1990〜93)と、ニール・ザスローの『モーツァルト全作品事典』(Norton、1990。邦訳は音楽之友社、2006)は、内容は異なりますがいずれも52曲を含めています。

というわけで、タイトルの答えは「およそ50曲」。今後も世界のどこかで新たな資料が見つかり、偽作と考えられていた曲がモーツァルトの交響曲に加わるかもしれません。

  1. 父レオポルトの作品かと評価が二転三転したあげく、最終的に真作と認められた『旧ランバッハ』が、そのうちの1曲です。
  2. たとえば、1782年に作曲した《ハフナー・セレナード》から行進曲(とメヌエット楽章?)を除いて《ハフナー交響曲(35番)》にしたり、アレグロとアンダンテの二部分から成る《シピオーネの夢》序曲にアレグロのフィナーレを加えて、交響曲に仕立て直しています(K.126+161/163, 141a)。
  3. この中には、37番や、クラリネット無しの40番初稿なども含まれます。