15. 11月 2010 · (2) 《運命》第1楽章はふりかけごはん はコメントを受け付けていません。 · Categories: 聖フィル♥コラム · Tags: ,

《運命》と聞いてまず思い浮かぶのは、子供でも知っているジャ・ジャ・ジャ・ジャーン!でしょう。ベートーヴェンはこの緊張感あふれるオープニング「そそそみー」を動機として、ひとつの楽章を作り上げてしまいました。

交響曲のような大規模な曲を作る場合、複数の動機を用いて楽章を構成するのが普通です。たとえば、第2回聖フィル定期で演奏した《エロイカ》第1楽章では、第1主題冒頭「みーそみーし……」の分散和音の動機や、それに続く「みーれどー」の順次下降進行の動機などが繰り返され、変形、展開されていました。ちなみに動機というのは「音楽における最小のまとまり」で、モチーフとも呼ばれます(主題=テーマは、もう少し大きな単位。「ひとまとまりの旋律」のことですね)。

ところが、《運命》第1楽章の核となる動機はひとつ。3つの短い音と1つの長い音から成る、タタタターン! いわゆる『運命動機』です。

この動機を大きな音で2回繰り返し、さらに弦楽器が次々とかけ合いで演奏する、タタタターンだらけの第1主題部。ホルンが同じ動機で誘い出した1st ヴァイオリンによる第2主題(63小節)で、ようやくあの不安定な『運命動機』から解放されるかと思いきや、実はチェロとコントラバスが低音で、静かに不安気にタタタターンを繰り返しています。展開部はもちろん、コーダもタタタターンだらけ。

こうして見ると、第1楽章はまるで、ごはんに『運命動機』のふりかけをまぶしたようです。お赤飯の上にパラパラとごま塩がのっている、なんていう次元ではありません。白いごはんがほとんど見えないくらい、徹底的にふりかけを混ぜ込んでいます。シンプルな(たとえば乾燥しそ?)『運命動機』1種類のふりかけだけで、第1楽章一丁あがり〜! 動機の展開(動機労作と呼びます)が得意なベートーヴェンならではの、究極の節約術です。